[AAS06-P27] 地上設置型 FTIR による HCFC-22, HCFC-142b 及び HFC-23 の観測
キーワード:フーリエ変換赤外分光器、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、温室効果ガス、南極昭和基地
我々のグループでは2007年に南極昭和基地(69.0°S, 39.6°E)にフーリエ変換赤外分光器(FTIR)(Bruker社製IFS120M型)を設置し, 2007, 2011, 2016年に太陽光を光源とした大気微量成分の赤外吸収スペクトル観測を実施した. FTIRで取得されるスペクトル領域(2-15µm)には対流圏及び成層圏に存在する多種の微量気体の濃度情報が含まれているため, FTIRはオゾン層破壊に関連した微量気体や温室効果気体のモニタリングに対して大きく貢献できる. 大気組成変化モニタリングネットワーク(NDACC)では地上設置型FTIRにおける温室効果ガスの観測に力を入れており, 強力な温室効果を有するクロロフルオロカーボン類(CFCs)やハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)の鉛直分布のリトリーバルに成功している(Zander et al., 2005; Zhou et al., 2016, Mahieu et al., 2016). また, 近年大気中への放出が急増している代替フロンのハイドロフルオロカーボン類(HFCs)についても衛星搭載型FTIR(ACE-FTS)で取得されたスペクトルからリトリーバル可能であることが示されている(Harrison et al., 2012).
本研究では, 2007年から2016年までに昭和基地で観測された赤外吸収スペクトルに対してインバージョン解析を行い, CHF2Cl(HCFC-22), CH3CClF2(HCFC-142b)及びCHF3(HFC-23)鉛直プロファイルのリトリーバルを試みた. 解析にはロジャーズの最適推定法(Rodgers, 2000)を基に開発されたSFIT4インバージョン解析プログラムを使用した. 解析に必要となるHCFC-22, HCFC-142b及びHFC-23の吸収線パラメータにはNASA/JPLのG. C. Toon氏が提供するPseudo-Line-Lists(PLL)を用いた. 解析の結果, 昭和基地上空のHCFC-142bの気柱全量は2011年まで約6%/yearの増加トレンドを示したが, 以降は減少していることがわかった. 一方で, HCFC-22とHFC-23の気柱全量のトレンドは2007年から2016年までの期間でそれぞれ約4%/year, 約5%/yearの割合で増加しており, 現在も大気中濃度が増え続けていることが示された. さらに, 日本の陸別(43.46°N, 143.77°E)に設置されているFTIRで取得されたスペクトルからもHCFC-22, HCFC-142bとHFC-23のリトリーバルを行い, NOAA/ESRLが実施している地上観測及びフラスコサンプリングによる測定結果と比較, 議論する予定である.
参考文献
Harrison et al., J. Geophys. Res., 117, D05308, 2012.
Mahieu et al., J. Quant. Spectrosc. Radiat. Transf., 186, 96-105, 2016.
Rodgers, C. D., Inverse methods for atmospheric sounding – Theory and practice, World Scientific, Singapore, 2000.
Zander et al., Environ. Sci., 2, 295–303, 2005.
Zhou et al., Atmos. Meas. Tech., 9, 5621-5636, 2016.
本研究では, 2007年から2016年までに昭和基地で観測された赤外吸収スペクトルに対してインバージョン解析を行い, CHF2Cl(HCFC-22), CH3CClF2(HCFC-142b)及びCHF3(HFC-23)鉛直プロファイルのリトリーバルを試みた. 解析にはロジャーズの最適推定法(Rodgers, 2000)を基に開発されたSFIT4インバージョン解析プログラムを使用した. 解析に必要となるHCFC-22, HCFC-142b及びHFC-23の吸収線パラメータにはNASA/JPLのG. C. Toon氏が提供するPseudo-Line-Lists(PLL)を用いた. 解析の結果, 昭和基地上空のHCFC-142bの気柱全量は2011年まで約6%/yearの増加トレンドを示したが, 以降は減少していることがわかった. 一方で, HCFC-22とHFC-23の気柱全量のトレンドは2007年から2016年までの期間でそれぞれ約4%/year, 約5%/yearの割合で増加しており, 現在も大気中濃度が増え続けていることが示された. さらに, 日本の陸別(43.46°N, 143.77°E)に設置されているFTIRで取得されたスペクトルからもHCFC-22, HCFC-142bとHFC-23のリトリーバルを行い, NOAA/ESRLが実施している地上観測及びフラスコサンプリングによる測定結果と比較, 議論する予定である.
参考文献
Harrison et al., J. Geophys. Res., 117, D05308, 2012.
Mahieu et al., J. Quant. Spectrosc. Radiat. Transf., 186, 96-105, 2016.
Rodgers, C. D., Inverse methods for atmospheric sounding – Theory and practice, World Scientific, Singapore, 2000.
Zander et al., Environ. Sci., 2, 295–303, 2005.
Zhou et al., Atmos. Meas. Tech., 9, 5621-5636, 2016.