日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS06] 大気化学

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、中山 智喜(長崎大学 大学院水産・環境科学総合研究科)、豊田 栄(東京工業大学物質理工学院、共同)、江口 菜穂(Kyushu University)

[AAS06-P30] 衛星観測により対流圏下部オゾンに対する前駆物質排出量削減の効果は検出できるのか

*梶野 瑞王1,2林田 佐智子3関山 剛1出牛 真4,1伊藤 一輝2 (1.気象研、2.筑波大学、3.奈良女子大、4.気象庁)

キーワード:下部対流圏オゾン、衛星観測、領域気象化学モデル、排出量削減

地上オゾンは健康や植物に有害であり、対流圏オゾンは温室効果としての役割を持つ。しかし、生成反応が非線形で排出量変化の影響がわかりにくい。衛星観測は面的に評価できるので排出量削減の効果を評価するためには有効なツールであるが、オゾンの場合、成層圏オゾンの存在のため地上オゾンの検出は極めて困難であった。

Hayashida et al. (2015)は、Earth Observing System (EOS) Aura衛星に搭載されたOzone Monitoring Instrument (OMI) センサから対流圏下層(0 – 3 km)オゾン量の算出アルゴリズムを開発し、中国華北平原を中心とした領域におけるオゾンカラム量の増大を示した。その後、全球モデルMRI-CCM2との比較研究やクラスタ解析を通して、その有用性を確実なものとして来た。

そこで本研究では、領域気象化学モデルNHM-Chemを用いて、2006年6月の東アジアにおけるオゾン濃度増大の水平分布を衛星観測と比較して検証した。衛星による対流圏下層オゾン観測結果は、晴天バイアスと上層のオゾンの影響(artifact)を受ける。しかし、それでもなお、前駆物質であるNOxと非メタン炭化水素(NMVOC)の将来的な排出量削減の効果、また過去からの排出量変化のトレンドを検出し得るかを検証するために、前駆物質を10%, 25%, 50%, 90%削減した感度実験を行い、下層オゾン濃度に対するレスポンスと、そのレスポンスの有意性を確認するためにt検定を行った。その結果、前駆物質が25%, 50%, 90%減少した場合、対流圏下層オゾン濃度はそれぞれ5-10%, 15-25%, 30-50%程度減少し、両側1%の有意検定で、それぞれ40%, 50%, 60%の領域で有意であることが判明した。