日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC28] 雪氷学

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:縫村 崇行(千葉科学大学)、石川 守(北海道大学)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学、共同)、永井 裕人(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)

[ACC28-P08] 札幌で9冬期間に観測された積雪不純物がアルベドと放射強制力に与える効果

*広沢 陽一郎1青木 輝夫1,2庭野 匡思2的場 澄人3兒玉 裕二4谷川 朋範2 (1.岡山大学、2.気象研究所、3.北海道大学 低温科学研究所、4.国立極地研究所)

雪氷圏は高い反射率と雪氷面積の変動が大きいことから、地球のエネルギー収支にとって重要な役割を果たす(Aoki et al., 1999)。大気中の光吸収性エアロゾルを起源とする積雪不純物は、積雪上に沈着すると、積雪アルベドを低下させる効果があるため、雪氷圏の温暖化を加速させる効果を持っている。代表的な豪雪地帯である札幌において、積雪アルベドは積雪粒径と積雪不純物濃度に強く依存していることが報告されている(Aoki et al., 2003, 2007)。本研究では、札幌の積雪アルベドにおける積雪不純物濃度の影響を、Aoki et al. (2011)によって開発された積雪アルベド物理モデル(PBSAM)を用いて調べた。観測場所は北海道大学低温科学研究所の気象観測露場(43°04'56"N, 141°20' 30"E, 15 m a.s.l.)である。観測期間は2007-2016年の9冬期間である。観測された広波長帯域アルベドと積雪粒径、積雪不純物濃度、下向き放射の観測データをPBSAMに入力して得られる広波長帯域アルベドの理論計算値を比較した。さらに、積雪不純物によるアルベドの変化に関する数値感度実験を行い、放射強制力(RF)を求めた。
解析期間の各年で時系列の観測値とモデル計算値を比較すると、積雪粒径や積雪不純物濃度の変化に対応したアルベド変動の計算値は観測値とよく一致した。全解析期間において、短波長域(SW)におけるアルベド観測値と計算値の比較から得られる決定係数(R2)と二乗平均平方根誤差(RMSE)はそれぞれ0.856と0.043で、これらの結果からPBSAMの高い精度が確認された。次に、ブラックカーボン(BC)と鉱物性ダストからなる積雪不純物の有無による、可視域、近赤外域、短波長域のアルベド変化に関する感度実験を行った。全解析期間における積雪不純物(BC+ダスト)によるアルベド変化は短波長域で-0.054であった。また、BCとダストによる短波長域のアルベド変化への寄与は、それぞれ-0.046と-0.008であった。全期間における積雪不純物による放射強制力は+6.8 Wm-2であり、BCとダストからの放射強制力は、それぞれ、+5.5 Wm-2と+1.3 Wm-2であった。また、涵養期と融雪期の放射強制力はそれぞれ、+2.6 Wm-2と+20 Wm-2であった。

参考文献
Aoki et al., 1999: J. Meteorol. Soc. Jpn., 77, 595-614..
Aoki et al., 2003: J. Geophys. Res., 108(D19), 4616, doi:10.1029/2003JD003506.
Aoki et al., 2007: Ann. Glaciol., 46, 375–381, doi:10.3189/172756407782871747.
Aoki et al., 2011: J. Geophys. Res., 116, D11114, doi:10.1029/2010JD015507.