日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC29] アイスコアと古環境モデリング

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植村 立(琉球大学 理学部)、川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所、共同)、竹内 望(千葉大学)

[ACC29-P02] 信号処理分野の先端技術導入による新たな古気候復元手法の提案

*原田 央1 (1.東京大学生産技術研究所芳村研究室)

キーワード:プロキシデータ、古気候復元、信号処理

近年人間社会において深刻度を増す異常気象は気候変動の一部として捉えることが可能である. しかし気候変動への理解は完璧とは未だ言い難い. 古気候研究は気候変動への理解を補完するものとして進められてきたが, プロキシデータを用いた古気候復元の既往研究ではその対象が局所的であることや気候変動の非定常性を考慮していない, などの問題が存在している. 本研究では全球のプロキシデータを長期間に渡って扱い, 適切な信号処理手法を用いることで 古気候変動の定量的評価を目的とする. まずプロキシデータの周波数の非定常性に着目し短時間フーリエ解析(Short-Time Fourier Transform)を用いる. この手法は卓越した周波数が時間的に変化する非定常な波形に有用である. また同時にSTFT の結果から自動的に卓越した周波数を検出するアルゴリズムを提案した. その結果信号処理に基づいた古気候変動の再現に成功し, 既往研究で示されているような変動を捉えることができただけでなく, 周期成分の非定常性が周期の長さで分けた区分ごとに異なる変動パターンを見せることも明らかにした. 同時に既往研究では曖昧にされてきたプロキシデータの空間相関について, 空間代表性という値を定義し定量的に示した. 空間代表性を検証したところ, 既往研究で扱われている範囲に比べてよりローカルなプロキシデータの適応性が示唆され, 相関の偶然性を排除する閾値を具体的に提案することに成功した. またプロキシデータの突発的な変化を定量的に示す特異性強度を, ”時間マルチフラクタル解析”と呼ばれる手法によって時系列データとして分析した. それによって特異性強度の変動パターンがプロキシデータ間で類似していることに加え, 歴史的イベントとの関係性も確認できたため, 古気候変動の研究手法として有用である可能性が示唆された. 本研究の結果は, プロキシデータを用いて古気候変動を再現する上での信号処理の位置付けを再確認する助けになるのに加え, より定量的な評価を下す基盤になると考えられる.