[ACG39-P04] インド洋全域昇温のパターンの違いとそのメカニズム
キーワード:エル・ニーニョ、インド洋全域昇温、昇温メカニズム
エル・ニーニョ現象の最盛期である冬以降、インド洋では全域的に暖水偏差が現れ翌年の夏頃まで続く。このインド洋全域昇温は、北西太平洋での高気圧性偏差の強化を介して、降水活動や熱帯低気圧活動などアジア地域の気候に大きな影響を与える。本研究ではインド洋全域昇温の季節性、空間パターンに着目し、海面熱フラックスや海洋波動をもとに各季節・海域での昇温メカニズムを事例ごとに調べた。インド洋で特に昇温が大きい領域は、冬には南インド洋で見られるが、翌年夏にかけて北インド洋へと移っていく。海面の熱収支を見ると、統計的には東インド洋の昇温には短波放射量の増加と風速弱化による蒸発冷却量の減少が大きく寄与している。一方、西インド洋の昇温には暖水ロスビー波やケルビン波などの海洋力学過程が寄与している。しかし個々の事例に着目すると、1991-92年のようにエル・ニーニョが発生したにも関わらず、インド洋全域昇温が発生しない事例も見られた。この期間の大西洋の海面水温 (SST) を見ると、通常はエル・ニーニョに伴って昇温することが多いが、冷却傾向を示していた。インド洋のSST変動には太平洋だけでなく大西洋のSST変動が影響している可能性が考えられる。この結果は、インド洋のSST変動をより正確に捉えるためには、3つの海洋の海盆間相互作用を考慮する必要性を示唆している。