[AHW26-P02] 都市河川の流量形成に果たす地下水の役割
ー東京都大田区・呑川における事例ー
キーワード:東京区部、都市河川、無降雨時の流量維持、地下水滲出
東京都大田区を流れる呑川は,その側壁と河床がコンクリートによって覆われた典型的な都市河川である.現在,「城南3河川清流復活事業」の一環として落合水再生センターからパイプ導水され目黒区大岡山駅下流の工大橋において放流される高度処理水によって,無降雨時には工大橋より下流では全流量がこの下水処理水によって維持されているとされる.ちなみに,無降雨時には工大橋より上流の呑川には水流は存在しない.一方で,工大橋より下流の護岸側壁(高さ5m程度)の途中には湧水パイプが埋設され,また流路区間によってはいわゆる“湧水孔”とよばれるコンクリート打ちが行わていない河床部分も存在する.さらに,コンクリートの継ぎ目からは地下水の浸み出しが認められることから,これらの経路を通じて一定量の地下水が常時呑川に流入し,その河川流量維持に寄与しているものと考えられる.高度処理水に比べて一般に溶存成分濃度が低い地下水の流入は高度処理水の水質改善につながることから,その量的な評価は環境面や衛生面からも重要である.
そこで,本研究では2015年7月28日,同10月26日および2018年1月20日のいずれも無降雨時に,工大橋から約4km下流の鶴林橋(2015年7月28日のみ,鶴林橋より100m下流の稲荷橋)までの流路区間において地下水流入量の推定を行った.現状では河床へのアクセスが不可能であるため採水は橋の上から行い,それぞれの調査日に実測した工大橋における高度処理水の電気伝導度と鶴林橋あるいは稲荷橋での河川水の電気伝導度の差(値の低下)に基づいて地下水流入量を計算した.浅層地下水の電気伝導度としては,同流路区間における大田区の「2010年度湧水調査結果」に記載された54地点の護岸湧水について電気伝導度と湧出量の重み付き平均値を求め,得られた値35mS/mで代表させた.計算の結果,鶴林橋あるいは稲荷橋の呑川の流量に占める地下水の割合は,2015年7月28日には約20%,同10月26日には約35%,2018年1月20日には約10%と求められた.
今後は河床におりて流量測定を行い,その結果に基づいて地下水流入量の正確な評価を行う予定であるが,今回の電気伝導度に基づく暫定結果は,いずれの時期においても無降雨時の呑川の河川流量の形成には地下水が無視できない寄与をしていることを強く示唆している.地下水流入量の時期による違いと河川近傍の地下水位の季節変化の関係についても,今後の研究課題としたい.
そこで,本研究では2015年7月28日,同10月26日および2018年1月20日のいずれも無降雨時に,工大橋から約4km下流の鶴林橋(2015年7月28日のみ,鶴林橋より100m下流の稲荷橋)までの流路区間において地下水流入量の推定を行った.現状では河床へのアクセスが不可能であるため採水は橋の上から行い,それぞれの調査日に実測した工大橋における高度処理水の電気伝導度と鶴林橋あるいは稲荷橋での河川水の電気伝導度の差(値の低下)に基づいて地下水流入量を計算した.浅層地下水の電気伝導度としては,同流路区間における大田区の「2010年度湧水調査結果」に記載された54地点の護岸湧水について電気伝導度と湧出量の重み付き平均値を求め,得られた値35mS/mで代表させた.計算の結果,鶴林橋あるいは稲荷橋の呑川の流量に占める地下水の割合は,2015年7月28日には約20%,同10月26日には約35%,2018年1月20日には約10%と求められた.
今後は河床におりて流量測定を行い,その結果に基づいて地下水流入量の正確な評価を行う予定であるが,今回の電気伝導度に基づく暫定結果は,いずれの時期においても無降雨時の呑川の河川流量の形成には地下水が無視できない寄与をしていることを強く示唆している.地下水流入量の時期による違いと河川近傍の地下水位の季節変化の関係についても,今後の研究課題としたい.