日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-HW 水文・陸水・地下水学・水環境

[A-HW26] 都市域の水環境と地質

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:林 武司(秋田大学教育文化学部)、西田 継(山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)、鈴木 弘明(日本工営株式会社 中央研究所、共同)

[AHW26-P05] カトマンズ盆地における地下水窒素汚染の解析

*森田 将成1Shakya Bijay1Shrestha Suresh2中村 高志3西田 継3 (1.山梨大学大学院医工農学総合教育部流域環境科学特別教育プログラム、2.トリブバン大学地質学部、3.山梨大学大学院総合研究部国際流域環境研究センター)

キーワード:地下水、人口過密都市、窒素汚染、水質トレーサ

ネパールカトマンズ盆地では、都市部での急激な人口の増加によって水需要が高まっている一方で、上下水道などのインフラの整備が遅れている。生活用水や農業用水の不足を補うために、水需要の半分以上を地下水に依存しているが、同時に慢性的な地下水の窒素汚染が問題となっている。本研究では、盆地内の広範囲で二種の浅井戸(開放、掘抜;3-30m)と深井戸(80-335m)から地下水を採取し、水質トレーサの分析から得られる情報を整理した。これにより、汚染様式と汚染原因の関連づけを試みた。浅井戸(開放と掘抜)の Na+およびCl-濃度は直線付近にプロットされたが、ほとんどの深井戸でCl-は検出されなかった。従って、本地域では地質からのCl-の供給はなく、浅井戸までの深度で生活排水を含む地表からの浸透の影響を受けていると考えられた。次に、アンモニア性窒素については、深井戸では浅井戸より高濃度で検出される確率が高く、ネパール飲料水質基準(1.17mgN/L)の超過率は65%であった。また、深井戸のδ15N-NH4は0~0.1‰の範囲に分布し、主に古カトマンズ湖の堆積物に由来することがわかった。一方、浅層の開放井戸のδ15N-NH4は3.0~7.0‰、堀抜井戸は2.0~5.0‰の範囲に分布し、生活排水や畜産排水等の人為起源と湖成堆積物の混合であると考えられた。硝酸性窒素については、深井戸ではほとんど検出されず、浅井戸では20%以下で基準値(11.3mgN/L)を超過していた。浅層の開放井戸のδ15N-NO3は9.0~22.0‰、掘抜井戸は15.0~23.0‰の範囲に分布し、脱窒の効果を考慮しても、人為起源の混入の可能性が高いことが示された。以上の結果から、本地域における地下水の窒素汚染対策には、発生源と消長プロセスの同定を同時に進める必要があると言える。