日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-OS 海洋科学・海洋環境

[A-OS09] Marine ecosystems and biogeochemical cycles: theory, observation and modeling

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:伊藤 進一(東京大学大気海洋研究所)、平田 貴文(北海道大学地球環境科学研究院)、Eileen E Hofmann (共同)、Enrique N Curchitser (Rutgers University New Brunswick)

[AOS09-P04] 対馬暖流域から日本海北部の表面海水δ18Oと塩分:時空変動の解明に向けた高密度広域調査の展開

*石村 豊穂1北島 聡2後藤 常夫3森本 晴之3児玉 武稔3南條 暢聡4田中 秀一5小出 晃士1西田 梢1高橋 素光2 (1.茨城工業高等専門学校、2.水産研究・教育機構西海区水産研究所、3.水産研究・教育機構日本海区水産研究所、4.富山県農林水産総合技術センター、5.鳥取県水産試験場)

キーワード:日本海、海水、酸素同位体比、塩分、対馬暖流

海水の酸素同位体比(δ18O-sw)は蒸発の影響や河川からの淡水の流入などによって変動し,塩分と相関する.また,この相関式には地域や季節によって変動がある事が指摘されている.東シナ海~日本海にかけての対馬暖流域においては,近年Horikawa et al. (2015)と小平ほか(2016)によって δ18Oswと塩分の関係が報告されている.一方で,その季節変動や経年変動,地域毎の詳細についてはよくわかっていない.そこで我々は,水産研究・教育機構および各県試験研究機関の連携のもと,日本海および東シナ海の表面海水試料を広域にサンプリングを行い,δ18Oswと塩分の関係について,その季節変動・経年変動を把握する試みを開始した.本研究では,これまで得られた海水のδ18Oswデータと塩分データを統合し,先行研究との整合性を検証するとともに,地域毎のδ18Osw-塩分関係式を構築することを目的とした.

研究に用いた海水試料は,2015年から2017年にかけて東シナ海~日本海の北緯30~43度,東経124~140度の100地点以上で,表面バケツないし船底取付けのポンプで採水した.分析にはキャビティリングダウン分光方式安定同位体比分析装置(CRDS: Picarro L2130-i)および安定同位体比分析システム(ヘッドスペースCO2平衡法+CF-IRMS:MICAL3c+IsoPrime)を用い,δ18O-swおよびδD-swを定量した.塩分はAutosalもしくはAutosalで較正したセンサを用いて測定した.

 本研究で得られたδ18Osw-塩分の関係式は対馬暖流域全体としては先行研究と概ね一致し,関係式の傾きは東シナ海と対馬海峡以東で顕著に異なっていた.さらに対馬海峡以東でも海域ごとに区分して検討してみた結果,日本海中部・対馬海峡と富山湾とでは切片が顕著に異なっており,δ18O-塩分の関係が海域によって異なる可能性が見出された.本研究では2017年秋以降に得られたδ18Oデータとも比較し,海域ごとの検討結果を報告する.

 今後はさらに高密度での季節毎のサンプリングに加え,鉛直分布のデータを蓄積するなど,東シナ海~日本海における高時空間分解能でのδ18Oマッピングを進める予定である。得られる知見は魚類耳石のδ18O解析に基づく回遊履歴の解明や、日本海固有水の形成過程などに利活用できると期待される.