[AOS15-P01] 海上波しぶき光学粒子計による波浪境界層観測:海面砕波と海洋性エアロゾル生成の時空間構造を捉える
キーワード:シースプレー観測、波浪境界層、海洋性エアロゾル
台風シミュレーション研究において最近では大気・海洋・波浪結合領域モデルが使われるようになった(Aiki et al. 2015)。大気海洋間フラックスのバルク式を従来のような力学的な側面だけでなく物質循環の側面からも包括的に高精度化するために、時代の変化に即した学際連携・分野開拓が必要である。本研究では2年間かけてシースプレー測器(海上波しぶき光学粒子計)とそれを用いた測定システムを開発した。この測器の特徴は、8粒径レンジ0.1秒毎の分解能を持つ光散乱式粒子計と3軸加速度センサーで構成されていることである。これによって海面の一つ一つの砕波による空気中の粒子数の変化や水面波との位相関係を調べる事ができるようになり、波浪境界層(水深10mから海上100mまでの領域)における渦・波・物質輸送の動態の解明が期待される。シースプレー観測は国内ではあまり行われていないが、海洋性エアロゾルの生成源の理解および、衛星や地上ライダー観測による対流圏のエアロゾル分布とそれを凝結核とした雲物理の研究との相互発展に役立てていくことも視野に入れている。2017年度のシースプレー観測は、係留ブイ(岩手県大槌湾:東京大学大気海洋研究所による協力)および海上観測塔(和歌山県田辺湾:京都大学防災研究所による協力)に測器を設置して、強風・塩水飛沫にさらされる環境下において測定システムの試験を行った。2017年8月7日15時(JST)に台風5号が和歌山県の海上観測塔に最接近し、風速23m/s、波高3.8mの環境下で無事に測定することができた。気象学・大気化学・海洋学・土木海岸工学・船舶工学コミュニティーを横断した研究を促進するために、このシースプレー測器をISEE共同利用機器として3台登録した。
http://co2.hyarc.nagoya-u.ac.jp/labhp/member/aiki/
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