日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG02] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻、共同)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

[BBG02-P02] 人工海水およびエタノール中におけるカルサイト表面でのステアリン酸分子の吸着構造

*佐久間 博1川野 潤2 (1.物質・材料研究機構、2.北海道大学)

キーワード:電子密度、石油の回収率、塩水、鉱物ー水相互作用

石油の貯留岩であるチョークから回収率を増進する技術として、鉱物表面に吸着した石油分子の脱離が人工海水の注入で試みられている。これまでの研究から、人工海水中にCa2+, Mg2+, SO42−イオンが含まれると回収率が増加することが知られており[1]、カルサイトをはじめとする炭酸塩鉱物表面の親水性・親油性がこれらのイオンとのイオン交換により変化することが回収率増進のメカニズムと考えられている[2,3]。これらの理論的考察を検証するために、炭酸塩鉱物/油/水界面の構造解析が必要とされている。

 本研究では表面X線散乱法により、カルサイト/油モデル分子の界面構造をエタノールおよび塩水中で測定した。油モデル分子としてステアリン酸(C18H36O2)単分子層をカルサイト表面に吸着させ、エタノール中および人工海水中で表面X線散乱を測定した。測定は高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーBL-4Cで実施した。

 エタノール中におけるカルサイト/ステアリン酸界面の構造解析では、メタノール中における先行研究[4]同様に、X線の入射角で低角側に単分子膜の厚さに依存するX線散乱強度の振動が見られ、この振動は5時間以上経過しても変化がなく、ステアリン酸の単分子膜が安定に存在することを示唆している。

 人工海水中におけるカルサイト/ステアリン酸界面ではエタノール中と同様に、低角側でX線散乱強度の振動が見られ、単分子膜が存在することがわかる。しかしながら、この振動周期がエタノール中とは異なっていることから、海水中ではステアリン酸の吸着構造がエタノール中とは異なることを示唆している。またX線を当て続けた場所では徐々に低角側のX線散乱強度の振動が消えていくことがわかった。これはX線により局所的な酸性化が起きている[5]可能性があり、これらの実験結果を解析することで海水による油モデル分子の脱離への影響を考察する。



References

[1] Zhang, Tweheyo, Austad (2007) Colloid Surf. A, 301, 199-208.
[2] Sakuma, Andersson, Bechgaard, Stipp (2014) J. Phys. Chem. C, 118, 3078-3087.
[3] Andersson, Dideriksen, Sakuma, Stipp (2016) Sci. Rep., 6, 28854.
[4] Fenter, Sturchio (1999) Geochim. Cosmochim. Acta, 63, 3145-3152.
[5] Laanait, Callagon, Zhang, Sturchio, Lee, Fenter (2015) Science, 349, 1330-1334.