日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 B (地球生命科学) » B-BG 地球生命科学・地圏生物圏相互作用

[B-BG02] 生命-水-鉱物-大気相互作用

2018年5月21日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:高井 研(海洋研究開発機構極限環境生物圏研究センター)、中村 謙太郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、上野 雄一郎(東京工業大学大学院地球惑星科学専攻、共同)、鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科)

[BBG02-P08] 15Maから12Maの北鹿海盆に堆積した有機物の地球化学的特徴と時代変化

*土田 星奈1掛川 武1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

秋田県北鹿地域には、約1500万年前に起こった海底熱水活動によって形成された大規模な黒鉱鉱床が数多く産出することが知られている。黒鉱鉱床は約1500万年前から1200万年前までに堆積した泥岩(M2泥岩)の層で覆われており、こうした黒鉱層序上盤の堆積岩は黒鉱形成時及びその直後の海洋環境や堆積海盆の熱履歴を記録している可能性がある。しかし、黒鉱形成中および形成後の堆積環境の変動やそれに対応した有機物変動について明らかにされていない。本研究ではこれらを解明するため、M2泥岩を対象に複数セクションで地質学的調査を行い、採取試料の地球化学的分析を行なった。
北鹿地域で時代の異なる3つのセクションで地質調査を行った。その中で大茂内沢セクションは黒鉱層準に相当する。新遠部沢セクションはM2泥岩中部に相当し、ドレライトの活動が活発な時期に相当する。小雪沢セクションはM2泥岩上部に位置し、珪長質凝灰岩を伴う。全有機炭素含有量にセクションごとの違いは見られなかった。その一方でケロジェンのH/C比やラマン分光分析法によるR2比、δ13C、δ15Nに地域による違いが見られた。新遠部沢セクションのケロジェンのH/C比は小雪沢・大茂内沢セクションより低く、それに対応するようにラマンシフトのD2バンドがD1バンドに対して相対的に低く、R2比が大きかった。これら特徴は、ドレライトの貫入による熱熟成が進行していためである。大茂内沢・小雪沢セクションではH/C比、R2比に大きな差は認められなかった。ケロジェンのδ13C値は新遠部沢セクションで-23.2~-21.8‰、小雪沢・大茂内沢セクションで-22.8~-21.6‰と、新遠部沢セクションの方が相対的に小さい結果となった。δ15N値についてもδ13C値と同様の傾向を示した。これらの違いは古北鹿海盆の進化に伴い有機物の起源物質の時系列変化を反映していると同時に、堆積盆の熱履歴変化も反映している。
これら結果は、黒鉱鉱床を形成する海底熱水活動及び火成活動に特有の特徴であると考えられる。こうした特徴を持つ一連の泥岩が黒鉱を覆っていることから、将来的にこうした堆積岩の地球化学的分析が海底に埋没した鉱床探査の指標になる可能性がある。