日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] 地球惑星科学のアウトリーチ

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学、共同)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)

[G04-P04] 爆発的噴火による噴石の弾道放出機構の特徴とその防災教育への普及の必要性-838年伊豆大島波浮港爆裂火口の噴火事例を基に-

*佐藤 俊一1 (1.東京大学大学院教育学研究科)

キーワード:火山災害、爆発的噴火、弾道放出、防災教育、火山岩塊

爆発的噴火は、マグマの性質に依らず、その初発の爆発時に既存の岩体や火道を塞いでいた岩体などが、マグマに熱せられたり接触し高まった山体中の膨張した火山ガス(主に水蒸気)により破裂することで起こる。その際、生じた岩塊や礫は、“弾道放出”と呼ばれる機構により、まるで大小の岩塊を一枚板の上に乗せ放り投げたような格好で、同一射出角にて同一初速度で投出された場合には、“大きな岩塊ほどより遠方に届く”という特徴を有する。したがって、このケースの場合に噴火後形成される堆積丘の形状は、火口の周りに低くリング状に盛り上がったマール地形となることが多い。一方、玄武岩質マグマによるストロンボリ式噴火などでは、ガスや流体による”噴流放出”という岩塊の放出機構が支配的となるため、火山性のガス流などが噴石を放出する際の主な支持母体となるので、弾道放出に比べ岩塊を支える力が脆弱なため、逆に大きな岩塊ほど噴火口近くに落下堆積し、小さな岩塊や礫ほどより遠くへと運ばれる傾向となることが知れている。この結果、火口を覆うような格好で円錐形の高まりを持つスコリア丘などが形成されることになる。
 以上のように、噴石を弾道放出機構により放出する水蒸気噴火・マグマ水蒸気噴火及び一般の火山の突然の噴火発生時においては、大きなサイズ(1m~数m大)の岩塊の方が小サイズのものよりも遠くの数km先にまで届く事態となり、思わぬ火山災害に見舞われることになることは、数年前の御嶽山や最近の草津白根山の事例で記憶に新しいところである。このようなわけで、火山災害の防災上の観点からも、特に我が国の場合には、学校教育の地学や物理の授業の中でこうした内容の導入・普及を図る必要があるのではないかと考える。
<参考文献> 
(1)Shunichi.Sato,『Mechanism of Causing Base Surge, inferred from the Bomb Sag’s Structure and its Trajectories』,単著,Kagoshima International Conference on Volcanoes, 国際火山会議(鹿児島),Proceedins,NIRA,p79-82頁
(2)佐藤俊一、『水蒸気爆発で発生する黒煙柱の初期形態と, 火口付近の噴火前地形及び爆発点源の位置との関係』,単著,日本火山学会誌「火山」,39(3), 99-111頁
(3)佐藤俊一、『噴石によるめり込み穴を素材とした火山エネルギー教材』,単著,中学校教育研究連合会・日本理科教育協会誌「理科(SCIENCE IN EDUCATION)」,第18巻,第1号,24-27頁
(4)佐藤俊一、『Block sagから推定される噴石の弾道と水蒸気爆発過程』,単著,日本火山学会誌「火山第2集,29, 140-147頁