日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

[G05-P01] タイの科学高校における自然災害(地震・火山)を軸とした地学教育の試み

*Okamoto Yoshio1,2 (1.大阪教育大学(非常勤)、2.Kamnoetvidya Science Academy)

キーワード:タイ,科学高校,地学,自然災害

KVIS(Kamnoetvidya Science Academy)はタイの科学教育の振興のために3年前に新設された全寮制の高校(英国のpublic schoolがモデル)である.タイ石油公社(PTT)系列のRASA財団が運営している.広大なPTT所有の敷地に,大学院大学(VISTEC)と隣接して立てられ,周囲は将来研究学園都市に発展させる構想がある.筆者はこの高校のvisiting teacherとして,earth science(地学)を教える機会を偶然得た.高校のofficial languageは英語で,タイ語以外の授業はすべて英語で行われる.各教科,科目でタイ人以外の外国人のvisiting teacherが関わっているのも特徴である.2017年度は前期後半の8月~9月の2ヶ月間の勤務の間に,地質学・地球物理学分野を中心に週4回(50分×4コマ)の授業を高校3年生4クラス対象に行った.地学という科目が未だ高校の科目としてはそれほど定着しておらず,中学校における地学分野の基礎的な知識も生徒によりかなりの差が見られる中で,苦労したのは日本と同じような地学の一般的知識と内容を2ヶ月の間にどのように詰め込むかという点である.当然地学の全分野を取り上げることはあきらめ,固体地球に内容を限った.内容は鉱物,岩石,地質,地震,火山からプレートテクトニクス,地球史という流れで構成した.さらに基礎コース(8月)と発展コース(9月)に内容を分け,発展コースではかなり高度な内容を扱うことにした.これは一般的な地学の授業というよりは,地球科学の特有の考え方を,科学を将来,職業に選択する可能性のある生徒により深く伝えるということを優先した結果である.さらに洪水以外に自然災害,とりわけ地震や活火山に乏しいタイの地理学的環境も理解しつつ,災害大国である日本や世界における地震,火山噴火の災害例を多数紹介した.これが成功したかどうかは今後の解析に待たれる.また学校の近隣で採集した岩石や化石を授業でできるだけ紹介し,簡単な実験や観察,実習をベースに授業を作り上げた.この手法はタイではまだ発展途上であり,その試行を意識した授業を行った.評価のため2ヶ月間の授業の最終セマスター試験で問題を英語で作成した.また各授業の様子は,常に授業に同席した地元タイの化学の先生(Dr.Janjira Maneesan)がビデオで撮影を行った.授業への出席チェック,試験採点等もすべて彼女が業務として行った.科目全体の進行に関してKVIS Senior AdviserのDr..Thanit Pewnimの指導を得た.本発表では,2ヶ月のカリキュラムの詳細と生徒の反応,試験結果などを紹介したい.また筆者のこの学校での授業は2018年度も続く予定であり今後の展望も考えたい.