日本地球惑星科学連合2018年大会

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[JJ] Eveningポスター発表

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[G-05] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

[G05-P07] 地学基礎の授業における「アイソスタシー」実験の実践報告

*南里 翔平1長谷川 宏一2 (1.学校法人市川学園市川中学校・高等学校、2.学校法人駒澤大学高等学校)

キーワード:アイソスタシー、地学基礎、実験

アイソスタシーとは,地球表面を構成する地殻が,その下位にあるより密度の大きいマントルの上に浮かんだ状態で圧力がつり合っている,という考え方で,地殻均衡論とも言う.平成29年度の駒澤大学高等学校(以下,本校)では1年生必履修科目として地学基礎を設置し,その中で,1学期に「太陽系の中の地球」・「地球の形と大きさ」・「地球内部の層構造」・「地球大気の層構造」の単元を扱った.このうち「地球内部の層構造」の単元では地球内部を物質の違いによって分けた場合(化学的区分)と,性質の違いによって分けた場合(力学的区分)とを紹介した上で,アイソスタシーを扱った.単元としてのアイソスタシーは新課程の地学基礎からは扱わないことになっていて,地学基礎の教科書では発展扱いになっており,上位科目の地学の単元として組み込まれている.

ところで,高等学校学習指導要領では地学基礎の目標として,「(1)日常生活や社会との関連を図りながら地球や地球を取り巻く環境への関心を高め,目的意識をもって観察,実験などを行い,地学的に探究する能力と態度を育てるとともに,(2)地学の基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的な見方や考え方を養う。」と定めている(番号は筆者補筆).このうち本校では,(1)については,例年11月に実施する箱根巡検を通して指導を行っている.また(2)については,通常の授業を通して指導を行っている.しかし,地学基礎は地球とその周辺で発生する様々なスケールの現象を対象としているため,現象を頭の中でイメージすることが地学の基本的な概念や原理・法則を理解する上で重要であると筆者らは考えているが,座学のみで高校生にそれを求めるのは難しい.そこで(2)項の指導に際しては実験を行ってこれを定着させることを考えている.

そこで筆者らは1学期に扱う内容の中からアイソスタシーを実験の題材として取り上げた.アイソスタシーの概念を正しく理解するためには1学期の単元に共通する質量・体積・密度・重力などの物理量を正しく理解する必要がある.あるいはアイソスタシーの概念を理解することができればこれらの物理量についても正しく理解できているということになる.そこでこれらの値を網羅的に扱うアイソスタシーを実験の題材として採用した.

展開は(1)講義,(2)実験,(3)実験の復習(講義),(4)試験とした.講義は教科書(啓林館『地学基礎改訂版』)・資料集(浜島書店『新地学図表』)の他に,適宜資料を追加して,本来発展的な内容を生徒が学習しやすくなるように努めた.実験はスライムをマントルに見立て,その上に木のブロックを浮かべることで概念としてのアイソスタシーを再現した.あらかじめ質量を計測したブロックの沈み方を観察し,沈んだ深さを定規で測定した.アイソスタシーの計算問題では,ある岩石柱の底面が受ける圧力を,底面積をS,高さをh,密度をρ,重力加速度をg,とすると,( S×h×ρ×g) / S = hρg,となるため,hρg = hρgとして計算を行っている.今回の実験でも体積を限定したブロックを用いているため,Sは計算から除外できるので,ブロックの底面にかかる圧力は密度ρ×スライム中に沈んでいる高さhで求めることができる.

平成29年度には定期試験後にアンケートを実施し,アイソスタシーの定着度を確認した.これによると実験をする前はアイソスタシーという用語をそもそも知らなかったような生徒も,実験を通してアイソスタシーについての理解が深まったことがわかった.

平成29年度まではスライムの作成から生徒に行わさせていたが,スライムの作成に時間がかかること,実験材料の消耗が著しいこと,スライムの密度が均質にならないために班毎の誤差が大きすぎることなどから,次年度以降は教員の側で作成したスライムを用いることも検討している.