日本地球惑星科学連合2018年大会

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[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG26] 福島第一原子力発電事故後の地域復興で科学者が今後取り組むこと

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:西村 拓(東京大学大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻)、溝口 勝(東京大学大学院農学生命科学研究科)、登尾 浩助

[HCG26-P08] 福島県飯舘村の水田地帯における放射性セシウム分布

*二瓶 直登1上田 義勝2 (1.東京大学大学院農学生命科学研究科、2.京都大学生存圏研究所)

キーワード:セシウム、水田

東京電力福島第一原発の事故に伴い,広範囲にわたる地域が放射性セシウムにより汚染された。土壌中の放射性セシウム濃度が特に高い農地では表層約5cmを剥ぎ取る除染が実施されている。一方、このような除染作業が行われるのは圃場の内部のみで、水田周囲の畦畔は除染作業が行われていない。原発事故から7年が経過し、避難指示が解除された地域でも、これから水稲の作付が徐々に行われる。除染が行われていない水田畦畔の汚染状況を把握するため、水田地帯の汚染マップ作製、畦畔の放射性セシウム濃度分布、水田地帯を流れる灌漑水中の放射性セシウム濃度を調べた。

(1)水田地帯の汚染マップの作製:調査地は福島県飯舘村の数十枚の水田から形成される水田地帯(約500m×200m)とした。歩行型放射能測定システム(KURAMA-2)を用いて、調査対象水田地帯の放射性セシウム汚染マップを作製した。表土剥ぎなど除染を実施した圃場内に比べ、除染が行われていない圃場や畦畔で高い傾向を確認した。

(2)畦畔の放射性セシウム分布:水田を取り囲んでいる畦畔の平坦部と灌漑水側の傾斜地下部(平坦部との高低差約1m)で放射性セシウム濃度を調べた。土壌採取は深さ15cmまで行い、5cm毎に分けて深さ別に測定した。その結果、畦畔の平坦部より傾斜地下部で放射性セシウム濃度は高い傾向を示し、平坦部から傾斜地下部へ放射性セシウムの移動が示唆された。なお、深さ別の放射性セシウム濃度は、各地点ともおおよそ表層5cmに存在していた。

(3)水田地帯を流れる灌漑水中の放射性セシウム濃度:台風(2017年台風21号)が通り過ぎた直後(2017年10月23日)に、水田地帯を流れる灌漑水中の放射性セシウム濃度を調べた。容量(L)当たりの放射性セシウムは採取地点の差はなかったが、重量(kg)当たりの放射性セシウム濃度は上流より下流で高かった。灌漑水をろ過したフィルターのオートラジオグラフィを取得したところ、ろ紙は全体に放射性セシウムが分布しているのではなく、粒子状の点が局在していた。水田地帯を灌漑水が通過する際に、粒状の放射性セシウムが供給されていることが示唆された。