[HDS10-P16] GPUを用いた津波浸水シミュレーションと津波即時予測への展開
キーワード:津波、浸水、シミュレーション、GPU
多様性に富む自然津波に対して津波予測を適切に行うためには,定常的な観測とともに数値シミュレーションの併用が不可欠である.高精度な津波予測のためには,陸域への遡上を含めたシミュレーションが望ましいが,高い計算コストを要するため膨大な計算時間がかかることが課題である.解析時間の大幅短縮のためには,GPUを用いた高速化は有効な手段である.現在,津波の発生・伝播から浸水・減衰までをシミュレートする津波浸水計算コードをCPU版とGPU版で開発中である.初期水位は,震源断層面を設定し,Okada(1992BSSA)による半無限媒質に対する地殻変動を計算する.水平変動(Tanioka and Satake 1996GRL)や,Kajiura(1963BERI)による水理フィルタも適用可能である.沖側は透過境界,陸側は遡上境界として,UTM座標系で非線形長波方程式を数値的に解くことで沖合の津波波形や浸水深等を得ることができる.計算格子は,3:1のネスティングを用いた不均質格子を設定でき,計算の高速化を図ることが可能である.計算環境を大規模なGPU環境を有する東京工業大学のTSUBAME3.0に構築し,具体的な計算を実施した.計算領域は東日本の太平洋側の1600km×3000kmで,千葉県の九十九里から外房沿岸で10m格子を最小格子とする10領域に対して浸水計算を実施した.1断層による津波の発生から6時間分の津波計算には実時間で約2時間,10領域を並行に計算した場合には約30分である.GPU版計算コードは,1GPUによる計算を想定しており,シナリオデータベースを構築する場合には,異なる波源を用いて同一領域の計算を並行する方法が効率的である.複数の要素断層を用いた場合の初期波源の計算コストに課題があるものの,一般的なCPUを用いた計算よりも約20倍の高速化は実現しており,GPUを用いた数値シミュレーションは,シミュレーションベースの津波予測研究に効果的である.例えば,データベース検索型の津波予測に対する広域を対象とした沿岸波高の予測のためのシナリオ計算はもとより,地域の浸水予測を対象とした計算コストの高いシナリオ計算で大きく貢献する.開発中の津波遡上即時予測システム(例えば,青井・他 2015JpGU)に対しては,TSUBAME3.0を用いて10,000シナリオ以上の遡上計算が実施でき,浸水予測精度の向上を見込んでいる.また,浸水対象領域を限定することで,津波発生後のシミュレーションによる即時浸水予測も可能となりつつある.
謝辞:津波浸水計算は,学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(課題番号jh170035-NAJ)により東京工業大学のTSUBAME3.0で実施した.本研究の一部は,総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)による.
謝辞:津波浸水計算は,学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(課題番号jh170035-NAJ)により東京工業大学のTSUBAME3.0で実施した.本研究の一部は,総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)による.