日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部、共同)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

[HDS11-P01] 融雪地すべりに対する簡易なリスク評価手法

*岡本 隆1大丸 裕武1村上 亘1 (1.国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所)

キーワード:地すべり、融雪、粘性圧縮理論、土壌雨量指数、リスク評価

冬季の積雪深が数メートルに達する豪雪地帯の山地斜面では、融雪に起因する地すべりが多発し地域の問題になっている。融雪地すべりのリスク評価のためにはMR(地表面到達水量;積雪底面から流出する降雨と融雪水量の総計)の変動把握が無積雪期の降雨同様に重要である。しかしMRは気象庁AMeDASなどの公共気象観測点で直接観測されないため、他の気象要素から推定する必要がある。本研究では、日MRを推定するための新しい手法として粘性圧縮モデルを提案する。この手法は本来、雪の粘性圧縮理論に基づき、降水量と積雪深の2要素を用いて降雪量の推定手法として開発されたものである。モデルの検証のため、多雪年の国川地すべり(2012年3月7日発生)および、少雪年の小栗山地すべり(2007年2月7日発生)に粘性圧縮モデルを適用しMRを推定した。ここで、地すべり地の日降水量と日積雪深は、地すべり地の周囲3点のAMeDASデータから計算した。さらに、MRを用いて土壌雨量指数(SWI)の第3タンク水位(SWI-S3)を地すべりリスク指標として計算した。
 多雪年(国川地すべり)のリスク指標SWI-S3は、1月は低いが2月になると上昇し、3月の融雪中・末期にピークに達する傾向を示した。このとき地すべりはリスクの上昇期に相当する3月7日に発生した。対照的に、少雪年のSWI-S3は、断続的な融雪が生起したため1月から高い状態を継続した。この結果は少雪年の地すべりが通常によりも早期(2月上旬に)発生したことを説明できる。このように粘性圧縮モデルは実際の融雪地すべりの発生と調和し、リスク評価に一定の妥当性があると考えられた。