[HDS11-P01] 融雪地すべりに対する簡易なリスク評価手法
キーワード:地すべり、融雪、粘性圧縮理論、土壌雨量指数、リスク評価
冬季の積雪深が数メートルに達する豪雪地帯の山地斜面では、融雪に起因する地すべりが多発し地域の問題になっている。融雪地すべりのリスク評価のためにはMR(地表面到達水量;積雪底面から流出する降雨と融雪水量の総計)の変動把握が無積雪期の降雨同様に重要である。しかしMRは気象庁AMeDASなどの公共気象観測点で直接観測されないため、他の気象要素から推定する必要がある。本研究では、日MRを推定するための新しい手法として粘性圧縮モデルを提案する。この手法は本来、雪の粘性圧縮理論に基づき、降水量と積雪深の2要素を用いて降雪量の推定手法として開発されたものである。モデルの検証のため、多雪年の国川地すべり(2012年3月7日発生)および、少雪年の小栗山地すべり(2007年2月7日発生)に粘性圧縮モデルを適用しMRを推定した。ここで、地すべり地の日降水量と日積雪深は、地すべり地の周囲3点のAMeDASデータから計算した。さらに、MRを用いて土壌雨量指数(SWI)の第3タンク水位(SWI-S3)を地すべりリスク指標として計算した。
多雪年(国川地すべり)のリスク指標SWI-S3は、1月は低いが2月になると上昇し、3月の融雪中・末期にピークに達する傾向を示した。このとき地すべりはリスクの上昇期に相当する3月7日に発生した。対照的に、少雪年のSWI-S3は、断続的な融雪が生起したため1月から高い状態を継続した。この結果は少雪年の地すべりが通常によりも早期(2月上旬に)発生したことを説明できる。このように粘性圧縮モデルは実際の融雪地すべりの発生と調和し、リスク評価に一定の妥当性があると考えられた。
多雪年(国川地すべり)のリスク指標SWI-S3は、1月は低いが2月になると上昇し、3月の融雪中・末期にピークに達する傾向を示した。このとき地すべりはリスクの上昇期に相当する3月7日に発生した。対照的に、少雪年のSWI-S3は、断続的な融雪が生起したため1月から高い状態を継続した。この結果は少雪年の地すべりが通常によりも早期(2月上旬に)発生したことを説明できる。このように粘性圧縮モデルは実際の融雪地すべりの発生と調和し、リスク評価に一定の妥当性があると考えられた。