日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)

[HGM03-P02] 柳生花崗岩の風化形態と岩相や節理構造との対応関係

*平田 康人1千木良 雅弘2 (1.京都大学理学研究科、2.京都大学防災研究所)

キーワード:球状風化、マイクロシーティング、冷却節理、花崗岩、正規組成累帯構造

花崗岩類は地下深くまで風化して,特徴的な風化形態を示すことが一般的である.ある花崗岩は球状の未風化岩塊を伴って風化し(球状風化),またあるものは低角の薄い板状に割れて風化する(マイクロシーティング).それぞれの代表例には,熊野花崗斑岩と広島花崗岩が挙げられる.花崗岩類の球状風化過程やマイクロシーティングの発達過程はこれまで報告されてきたが,その風化形態が分かれる理由は明らかでなかった.近畿中部の白亜紀の柳生花崗岩体は小起伏な地形面をなし,所々で鮮新世の古琵琶湖層群の北又礫層に被覆されているため,その堆積以前から長期間の風化作用を一様に受けてきたと考えられるが,球状風化やマイクロシーティングを含む様々な風化形態を生じている.本研究では,柳生花崗岩体の北西部において,風化形態および岩相の分布と節理の構造を調べた.花崗岩類の風化形態はその同一岩体内で,岩体の貫入境界からの距離によって変化していることが明らかとなった.柳生花崗岩体が貫入した堆積岩との境界に近いところでは,球状風化が認められ,その境界から4 km以上離れた花崗岩体中心部では,マイクロシーティングや等方的な亀裂を伴うマサがその代わりに認められた.柳生花崗岩の岩相は岩体縁辺部から中心部に向かって,中-粗粒黒雲母花崗岩‐花崗閃緑岩,粗粒角閃石黒雲母花崗閃緑岩‐トーナル岩,粗粒黒雲母花崗岩の順に移り変わり,岩体中心側の花崗岩と花崗閃緑岩との境界付近で斑状組織や黒雲母,カリ長石,石英の顕著な配列面を発達させていた.このような岩相分布は,岩体周囲からの冷却によってマグマが結晶分化した結果であると考えられる.球状風化は花崗岩からトーナル岩までの鉱物組成に見つかり,斑状組織や鉱物の配向性の有無と関係なく見つかった.このことは,その球状風化の発現が岩相に制約されていないことを示唆する.その代わりに,風化形態の産状は節理の配列構造に関係していた.岩体縁辺部における主要な高角節理は1つの点から放射状に広がり,より短い高角節理がそれに対して直交していた.これはある種の柱状節理であると考えられる.その一方で,岩体中心部における高角節理は,1つの東西あるいは南北走向をもつ面が卓越し,互いに交差していた.この節理群は地域の応力場の影響を受けて生じたと考えられる.したがって,花崗岩の球状風化は,そのような柱状節理の形成を伴う冷却過程と岩石構造が要因であり,マイクロシーティングはテクトニックな節理形成過程が関係しているという可能性が考えられる.