[HGM03-P03] DEMを用いた流域の平均侵食量の評価
キーワード:地形発達、数値標高モデル(DEM)、侵食量、高度分散量、地理情報システム(GIS)
1.はじめに
日本の湿潤変動帯における地形発達モデルは,これまでも数多く議論されており,Ohmori(1978)は,5万分の1地形図を用いた高度分散量から山地の成長段階を評価し,将来の予測をしている.
本研究では,全国的に入手可能な10mDEMを用い,ArcGISにより流域単位での平均侵食量を求め,Ohmori(1978)の高度分散量のデータと比較した.
2.対象地域
Ohmori(1978)で分析している山地から,発達段階別で,宗谷丘陵,太平山地,阿武隈高原,白神山地,三河高原,白山,関東山地,赤石山地,飛騨山脈に絞った.
3.解析方法
ArcGISでの手順として,(1)集水域の作成,(2)接峰面の作成,(3)侵食深の算出,(4)集水域ごとの平均侵食量の算出をし,これを元に(5)グリッドサイズを変更して平均侵食量を算出した.
(1)については累積流量図と河川データによりしきい値を決定し,二次河川以上を集水域としてみなした.(2)で求めた接峰面とDEMの差分から,(3)侵食深を求め,(4)以下の流れで集水域ごとの平均侵食量を求めた.
集水域ごとの平均侵食量
= (集水域に含まれる侵食量の総和×1グリッドの面積)÷(集水域のグリッド数×1グリッドの面積)
= 集水域に含まれる侵食量の総和÷グリッド数
本作業の(2)- (5)については,arcpyで自動処理を行った.
4.各山地の平均侵食量について
各山地の平均侵食量を比較したところ, 成長期初期の宗谷丘陵,前期の太平山地,中期の三河高原,後期の赤石山地の平均侵食量は,グリッドサイズ3では順に約2.63,6.36,7.29,11.46(?/平方メートル),グリッドサイズ21では18.14,45.32,52.86,97.87(?/平方メートル)で,本研究で得られたデータとOhmori(1978)の高度分散量の相関をとると,正の相関が見られた.このことから,山地内での侵食量に多少の差はあるものの,山地別ではOhmori(1978)の地形発達段階区分に沿った結果が得られた.
5.評価と課題
平均侵食量を数式化することにより,これまでは山地単位で議論されていた地形発達段階や山地の状態を,地理的に流域単位で評価できる.また,ArcGISの機能を有効に活用することにより,これらの分析もオートメーション化でき,作業を効率良く行えるメリットがある.
今後は,地形発達に係る様々な条件を考慮し,数式化するように進めたい.
参考文献
Ohmori, H. (1978) : Relief Structure of the Japanese Mountains and their Stages in Geomorphic Development. Bull. Dept. Geogr. Univ.Tokyo, 10, 31-85.
吉川虎雄(1985):『湿潤変動帯の地形学』東京大学出版会,132ページ.
日本の湿潤変動帯における地形発達モデルは,これまでも数多く議論されており,Ohmori(1978)は,5万分の1地形図を用いた高度分散量から山地の成長段階を評価し,将来の予測をしている.
本研究では,全国的に入手可能な10mDEMを用い,ArcGISにより流域単位での平均侵食量を求め,Ohmori(1978)の高度分散量のデータと比較した.
2.対象地域
Ohmori(1978)で分析している山地から,発達段階別で,宗谷丘陵,太平山地,阿武隈高原,白神山地,三河高原,白山,関東山地,赤石山地,飛騨山脈に絞った.
3.解析方法
ArcGISでの手順として,(1)集水域の作成,(2)接峰面の作成,(3)侵食深の算出,(4)集水域ごとの平均侵食量の算出をし,これを元に(5)グリッドサイズを変更して平均侵食量を算出した.
(1)については累積流量図と河川データによりしきい値を決定し,二次河川以上を集水域としてみなした.(2)で求めた接峰面とDEMの差分から,(3)侵食深を求め,(4)以下の流れで集水域ごとの平均侵食量を求めた.
集水域ごとの平均侵食量
= (集水域に含まれる侵食量の総和×1グリッドの面積)÷(集水域のグリッド数×1グリッドの面積)
= 集水域に含まれる侵食量の総和÷グリッド数
本作業の(2)- (5)については,arcpyで自動処理を行った.
4.各山地の平均侵食量について
各山地の平均侵食量を比較したところ, 成長期初期の宗谷丘陵,前期の太平山地,中期の三河高原,後期の赤石山地の平均侵食量は,グリッドサイズ3では順に約2.63,6.36,7.29,11.46(?/平方メートル),グリッドサイズ21では18.14,45.32,52.86,97.87(?/平方メートル)で,本研究で得られたデータとOhmori(1978)の高度分散量の相関をとると,正の相関が見られた.このことから,山地内での侵食量に多少の差はあるものの,山地別ではOhmori(1978)の地形発達段階区分に沿った結果が得られた.
5.評価と課題
平均侵食量を数式化することにより,これまでは山地単位で議論されていた地形発達段階や山地の状態を,地理的に流域単位で評価できる.また,ArcGISの機能を有効に活用することにより,これらの分析もオートメーション化でき,作業を効率良く行えるメリットがある.
今後は,地形発達に係る様々な条件を考慮し,数式化するように進めたい.
参考文献
Ohmori, H. (1978) : Relief Structure of the Japanese Mountains and their Stages in Geomorphic Development. Bull. Dept. Geogr. Univ.Tokyo, 10, 31-85.
吉川虎雄(1985):『湿潤変動帯の地形学』東京大学出版会,132ページ.