日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、島津 弘(立正大学地球環境科学部地理学科)

[HGM03-P07] 基盤地図情報を用いた濃尾平野の数値地形解析

*岩橋 純子1中埜 貴元1 (1.国土地理院)

キーワード:濃尾平野、沖積平野、DEM、地形分類、HAND

地形分類図は類似した地形的特徴を示す範囲を線引きした図である。水害や土砂災害の好発地の推定や、インフラ開発適地の推定に使用される他、同一の気候・地質構造の条件下では岩盤の侵食抵抗性や地盤条件を表す指標となるため、土壌の推定、地震頻発地での揺れやすさの推定にも使用されてきた。Iwahashi and Pike (2007)・Iwahashi et al. (2018)は解像度1kmおよび280mのDEM(Digital Elevation Model)を用い、傾斜・尾根谷密度・凸部の分布密度の3つの地形量を用いて全球の地形分類図を作成した。そられは山地、丘陵地、段丘・扇状地、平野を識別するのに概ね適当だったが、自然堤防帯のような平野の微高地を識別することはできなかった。

平野部の地形をDEMから把握するためには、航空レーザなどさらに高解像度なDEMの利用が考えられる。しかし、平野部においては農地化・都市化による人工改変が激しく、盛土による人工的な急斜面等がDEMにも反映されている。そのため、DEMを用いた自然地形(人工改変前の地形)の把握は難しい。一方、平野部は人口が集中して生活圏となっており、既存の地形分類図が存在しない地域では、災害脆弱性や土地開発適地の把握のために、微地形の空間分布の正確な把握が求められる。本発表では、日本の代表的な都市化した沖積平野である濃尾平野を対象に、DEMから計算した地形量とその表現能を調査した。

基盤地図情報(国土地理院)を用いて10m~90mメッシュのDEMを作成し、傾斜・尾根谷密度・凸部の分布密度に加え、Rennó et al. (2008)が開発したHAND (Height Above Nearest Drainage;最寄り水路からの比高)を計算した。HANDは、ノイズ増幅型でない標高の一次情報を求めたいことと、上流部の情報を含む水文分析による地形量であることから選んだ。

結果は概ね次の通りである。
尾根谷密度の画像はデルタの縁辺部の識別に有効であったが、デルタ内の人工改変が進んだ領域のノイズを過度に増幅する効果があった。凸部の分布密度の画像は、養老断層付近の平野部の沈降領域を表現したが、平野部の微高地の全体的な描写は不明瞭であった。一方、HANDは人工的な凹凸の多い都市部でも、比較的、沖積平野の緩扇状地やデルタの検出に優れており、沖積平野の地形分類のパラメータとして有望である事がわかった。

 引用文献

Iwahashi J, Pike RJ (2007) Automated classification of topography from DEMs by an unsupervised nested-means algorithm and a three-part geometric signature. Geomorphology 86:409-440
Iwahashi J, Kamiya I, Matsuoka M, Yamazaki D (2018) Global terrain classification using 280 m DEMs: segmentation, clustering, and reclassification. Progress in Earth and Planetary Science 5:1 https://doi.org/10.1186/s40645-017-0157-2
Rennó CD, Nobre AD, Cuartas LA, Soares JV, Hodnett MG, Tomasella J, Waterloo MJ (2008) HAND, a new terrain descriptor using SRTM-DEM: Mapping terra-firme rainforest environments in Amazonia. Remote Sensing of Environment 112:9 3469-3481