[HSC05-P06] CO2地中貯留に向けた坑井地質調査におけるカッティングス分析の有効性:長岡サイトの例
キーワード:カッティングス、坑井物理検層、コア、粒度分布、孔隙径分布、CO2地中貯留
CO2地中貯留において貯留層のクオリティは,貯留層の不均質性に大きく依存する.貯留層の不均質性は,貯留層の堆積環境と密接に関わり,堆積環境が異なれば貯留層の岩石物性にも影響を与える.このことから,貯留層評価では,貯留層の堆積環境やそれと関連する岩石物性の把握は重要である.しかし,CO2地中貯留では,経済的価値の低い帯水層を対象とする際には利用可能な地質情報に乏しいため,利用可能なデータを活用し貯留層評価の不確実性を低減させることが望ましい.坑井物理検層やコア・カッティングス試料は,貯留層評価には欠かせない坑井地質情報であるが,CO2地中貯留におけるカッティングス利用の利点に関する検討はそれほど多くはない.本研究では,長岡サイトにおける坑井物理検層解析とコア試料解析に加え,カッティングス試料の粒度分布と孔隙径分布測定を実施し,それらのCO2地中貯留に対する貢献を検討する.
長岡サイトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2を圧入する実証試験が実施された.貯留層は主に浅海堆積物から構成される.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.すべての坑井では物理検層が実施され,孔隙率,浸透率などの岩石物性が算出され,コアデータとの整合性も確認された.IW-1では貯留層のコア試料が採取され,IW-1,OB-2,OB-3ではカッティングス試料が10~20m間隔で採取された.カッティングスは,坑井掘削時に泥水とともに地表まで運ばれてくる地層の堀り屑で,坑井地質の把握に広く利用されている.
各坑井の自然ガンマ線検層は,上方細粒化・粗粒化サクセションからなる堆積サイクルが認められた.堆積サイクルに基づく坑井間対比によって,各坑井の貯留層の同一層準を把握した.この堆積サイクルは,IW-1から採取された貯留層のコア試料でも確認でき,堆積相解析からひとつの堆積サイクルはプロデルタ~デルタフロント部の堆積物への変化に対応した.プロデルタ部では孔隙率と浸透率が低く,デルタフロント部で孔隙率と浸透率が高く,デルタフロント部が貯留最適層と判断された.貯留層の孔隙率と浸透率は,坑井間での差異は認められなかった.
西澤ほか(2016)は,CO2地中貯留ではCO2が孔隙中の塩水を置換しながら移動する毛管圧卓越領域での置換型流動が主体となることを指摘した.長岡サイトでもキャピラリー数(6.9×10-8)に基づくと毛管圧卓越領域となる.このことは,長岡サイトにおける圧入後のCO2分布を解釈する際には,貯留層を構成する岩石の浸透率や孔隙率に加え,毛管圧と密接な関係のある孔隙径分布の把握が重要となることを意味する.一般に,孔隙径分布測定はコア試料の利用が望ましい.しかし,長岡サイトでは貯留層部のコア試料の回収はIW-1のみである.そこで,カッティングスを利用して粒度分析と孔隙径分布を測定した.その結果,OB-3のカッティングスは,他の坑井と比べて,粒度分布・孔隙径分布が統計的に有意に細粒・細孔側に偏っていた.このカッティングス分析結果は,圧入後のCO2がOB-3に到達していない観測結果の解釈に活用できるとともに,OB-3に向かって沖合環境に漸移するとの先行研究に基づく知見を支持する.カッティングスは,試料採取深度に不確実性があるものの,粒度分布・孔隙径分布などを直接測定できることが大きな利点である.今回の検討から,CO2地中貯留のための坑井地質調査は,物理検層やコアに加えカッティングスの併用が有効と考えられる.
長岡サイトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2を圧入する実証試験が実施された.貯留層は主に浅海堆積物から構成される.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.すべての坑井では物理検層が実施され,孔隙率,浸透率などの岩石物性が算出され,コアデータとの整合性も確認された.IW-1では貯留層のコア試料が採取され,IW-1,OB-2,OB-3ではカッティングス試料が10~20m間隔で採取された.カッティングスは,坑井掘削時に泥水とともに地表まで運ばれてくる地層の堀り屑で,坑井地質の把握に広く利用されている.
各坑井の自然ガンマ線検層は,上方細粒化・粗粒化サクセションからなる堆積サイクルが認められた.堆積サイクルに基づく坑井間対比によって,各坑井の貯留層の同一層準を把握した.この堆積サイクルは,IW-1から採取された貯留層のコア試料でも確認でき,堆積相解析からひとつの堆積サイクルはプロデルタ~デルタフロント部の堆積物への変化に対応した.プロデルタ部では孔隙率と浸透率が低く,デルタフロント部で孔隙率と浸透率が高く,デルタフロント部が貯留最適層と判断された.貯留層の孔隙率と浸透率は,坑井間での差異は認められなかった.
西澤ほか(2016)は,CO2地中貯留ではCO2が孔隙中の塩水を置換しながら移動する毛管圧卓越領域での置換型流動が主体となることを指摘した.長岡サイトでもキャピラリー数(6.9×10-8)に基づくと毛管圧卓越領域となる.このことは,長岡サイトにおける圧入後のCO2分布を解釈する際には,貯留層を構成する岩石の浸透率や孔隙率に加え,毛管圧と密接な関係のある孔隙径分布の把握が重要となることを意味する.一般に,孔隙径分布測定はコア試料の利用が望ましい.しかし,長岡サイトでは貯留層部のコア試料の回収はIW-1のみである.そこで,カッティングスを利用して粒度分析と孔隙径分布を測定した.その結果,OB-3のカッティングスは,他の坑井と比べて,粒度分布・孔隙径分布が統計的に有意に細粒・細孔側に偏っていた.このカッティングス分析結果は,圧入後のCO2がOB-3に到達していない観測結果の解釈に活用できるとともに,OB-3に向かって沖合環境に漸移するとの先行研究に基づく知見を支持する.カッティングスは,試料採取深度に不確実性があるものの,粒度分布・孔隙径分布などを直接測定できることが大きな利点である.今回の検討から,CO2地中貯留のための坑井地質調査は,物理検層やコアに加えカッティングスの併用が有効と考えられる.