日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 地理情報システムと地図・空間表現

2018年5月24日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学空間情報科学研究センター)

[HTT17-P01] ジオパーク地図における地形表現方法の検討-茨城県北ジオパークを対象にして-

今泉 梨架1、*小荒井 衛1 (1.茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)

キーワード:ジオパーク地図、地形表現、茨城県北ジオパーク

ジオパークとは,科学的に価値のある地形や地層の露頭,生態や文化,考古・歴史など,その地域特有の事象を保全し,教育や研究,観光(ジオツーリズム)に活用し,地域活性化を目指すための制度である.各ジオパークではパンフレット形式の地図が数多く作成され,観光客に配布されている.目代・小荒井(2011)では,ジオパークにおける地図活用の課題について述べられており,その主なものとしては,ほとんどのジオパークの地図が観光地図的側面から抜け切れておらず,地学的な背景の説明が乏しい,地形の表現方法に工夫が見られない,作成の過程で地理学・地図学的議論が十分に行われていない,各機関が作成した地質図や土地条件図などの主題図をもっと活用すべき等の問題点が指摘されている.本研究では,現在各ジオパークで使用されている地図の分類と評価を行い,ジオパークやジオツアーに訪れた一般客やインタープリターなどのジオパークに関わる専門家を対象にしたアンケート調査を通して,ジオパーク地図に不可欠なコンテンツや地形等の表現方法を検討し,前述したジオパーク地図の課題を改善した地図を作成することを目的としている.
日本のジオパーク43地域のうち,資料がある23地域のジオパークの地図をもとに,地形表現方法の分類・評価を行った.また,茨城県北ジオパークで現在使用されている地図が一般的にどのようにとらえられているか,またその地域の地質・地形的な成り立ち(ジオストーリー)を伝えるために有効な地形表現方法を知るために,3種類のアンケート調査を実施した.その結果から,ジオパーク地図の作成に必要な地形表現の要素を決定した.その要素をふまえ,茨城県北ジオパークの千波湖・大宮段丘・棚倉断層の3つのジオサイトを対象に地形表現方法を検討し,地図を試作した.また,試作した地図を使用データや使用した地形表現方法の違いなどから比較・検討を行った.
アンケート結果から,地形表現方法を工夫し,一般の人にジオパークおよびジオサイトのストーリー性を理解してもらえるような地図が求められていると考えられる.そして,直感的に山地や低地などの地形の凹凸を理解することができる地形表現方法が好まれる傾向にあると考えた.また,地形表現方法に関するアンケート結果から,陰影表現や細かい段彩表現を用いた地図が成り立ちを理解する上で必要な表現であるということが考察できた.以上より,ジオパーク地図に必要である要素は,(1)地形の凹凸や成り立ちを理解しやすくするための表現方法(陰影図,段彩図など),(2)地質図や地形区分図などの主題情報,とし,これらの要素を取り入れた地形表現を考案し,対象地域別にDEMデータや地形表現方法を変えて数パターンの地図を作成した.茨城県北ジオパークで使用されている地図は,地形表現がほとんど使われておらず,地図そのものから地形やジオストーリ-を読み取ることは容易ではない.しかし,本研究で試作した地図は陰影表現や段彩表現を用いることで直感的に地形をイメージしやすく,主題情報の重ね合わせにより地質・地形の情報も読み取ることができる地図であると考えられる.
本研究は科学研究費補助金(課題番号16K01213)による補助を受けています.