日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)

[HTT18-P01] 首都圏近郊山間部森林域における渓流水の化学特性と大気沈着の影響評価(5)

*大河内 博1真庭 護1西村 寿々美1中野 孝教1井川 学2 (1.早稲田大学、2.神奈川大学)

キーワード:窒素飽和、安定同位体、硝酸態態窒素、霧沈着、越境大気汚染

神奈川県西部に位置する丹沢地域では、大気汚染物質によるモミ林の立ち枯れや土壌の酸性化が報告されている。私達は、渓流水を通じて高濃度の硝酸イオンが流出していることを報告してきた。

ここでは、2007年から2016年における東丹沢における10年間の渓流水質の変化と大気沈着の影響について検討した結果を報告する.溶存態全窒素(DTN)濃度は南東部(9年間平均:1.08 mgN/L)> 南西部(0.96 mgN/L)> 北部(0.64 mgN/L)であり、3地域ともに減少傾向にあった。2007年に対する2016年のDTN濃度比は北部、南東部、南西部でそれぞれ0.46、0.58、0.62であり、北部で最も減少していることが分かった。2009年以降、3地域ともに硝酸態窒素(NO3--N)の割合が減少し、DONの割合が増加した。特に、北部でDON増加割合が高く、NH4+-Nは明確な傾向はなかった。渓流水中NO3--N濃度は明確に減少したが、この原因として、DIN沈着量の減少、生態系内における窒素吸収量の増加,表層土壌における硝化量の減少が考えられる。大山山頂におけるNO3-沈着量の2010年に対する2016年の比は林外雨、スギ林内雨で0.33、0.62、NH4+沈着量の2010年に対する2016年の比は林外雨、スギ林内雨で0.29、0.69であり、DIN沈着量が減少していた。NO3-沈着量の減少はNOxの国内排出量が低下したことを反映した可能性がある。丹沢大山山頂における降水と渓流水の水素・酸素安定同位体比の測定も行った.林内雨と林外雨のd値(=δD-8×δ18O)は夏季に低下し、冬季に増加するという明瞭な季節変化を示し、冬季には日本海側からの水蒸気の流入を示していた。一方、大山川の水素・酸素安定同位体比とd値はほぼ一定であり、林外雨および林内雨の直接的な影響を受けず、地下水の寄与を強く受けていることを示唆していた。発表時には,霧沈着の影響とともに,越境大気汚染の影響について議論する.