[MAG32-P02] ディープラーニングを用いたマルチタイプ地震検知・判別手法の開発
キーワード:DONET、機械学習、地震検知
はじめに:海洋研究開発機構では、熊野灘から室戸沖に設置された海底地震・津波観測監視システムDONETの海底地震計データを用いて、南海トラフにおける地震の観測とモニタを行っている。南海トラフで発生する地震は通常の地震のほかに、浅部低周波地震(low-frequency events; LFE)の発生が知られている。LFEは通常の地震と比べて短周期成分の放射が弱い一方、長周期成分に大きなエネルギーを持つという特徴がある。また、微動状の波形を示し数分程度以上の長い継続時間を持つ。これらの地震の発生はそれぞれ異なる背景を持ち、通常の地震は地殻内の応力の解放によって発生すると考えられ、LFEはプレート境界断層のゆっくりとしたすべりによって発生すると考えられる。これらの地震の存在はプレート境界等における断層すべりの多様性を示しており、従って活動のモニタと発生メカニズムの研究は地震発生帯における断層すべりと摩擦特性についての理解に役立つと期待される。
我々はこれまでに、DONETデータを用いて通常の地震および浅部LFEの活動モニタと研究を行ってきた。しかしLFEは微動状の波形を示すために、通常の地震を前提としたシステムではトリガされず、目視によって検知を行ってきた。LFEの活動をモニタするためには、自動的に検知を行い、かつ通常の地震と区別する必要がある。
本発表では、深層機械学習を用いた人工知能(AI)による、通常の地震とLFE自動検出および、判別するシステムの開発について紹介する。前述のように、通常の地震とLFEは周波数成分や継続時間に違いがある。地震動波形は一次元時系列データの集合であるが、ランニングスペクトルを用いる事により周波数特性の違いとシグナルの継続時間を同時に表現可能である。従って、ランニングスペクトルの画像認識から、通常の地震とLFEを検出し、それぞれを判別する手法の開発を試みている。
手法:ここでは画像認識のために深層畳み込みニューラルネット(CNN)を使用し、教師データを用いた学習を行う。これを用いて連続スペクトル画像から、通常の地震およびLFEの検出を行い、さらに判別を行う。
DONETデータは品質管理のために、定期的にランニングスペクトルを作成している。ここでは、2-10Hzの成分について作成したプロットを用いる。ランニングスペクトル画像を強度の対数に比例したグレースケールに変換し、シグナル探索に適したサイズに変更する。1時間ごとに作成したプロットを接続し、1日長のスペクトル画像を作成する。
深層CNNを構築するには教師データが必要である。教師データとしてLFE、通常の地震、背景ノイズのカテゴリを用意し、以下の手順で64x64ピクセルの教師データ画像を作成した。このサイズの画像は2-10Hzのスペクトルの約225秒のウインドウに対応する。
LFEについては、2015年9-10月および2016年4月にあった活発な活動について作成したカタログからイベント発生時刻をリストし、これを基に画像を切り出す。継続するシグナルが画像の中心に近くなるよう、時間方向について適宜切り出し時刻をシフトした。374のイベントについて、シグナルが明瞭に見られた観測点から16710の教師データを作成した。通常の地震については、DONET自動震源決定による震源情報を基に作成した。イベント数がLFEと同じオーダーとなるよう、2016年1月と2月に発生した771の地震から27294の教師データを作成した。また、遠地地震によるシグナルの学習のため、2015年から2016年に起きたマグニチュード7以上の全世界の地震についてP波到達時刻の画像を切り出し、通常の地震の教師データに含めた。22の地震について、924の画像を作成した。ノイズについては、2015年から2016年について、カタログに掲載されたLFE、自動震源決定で検知された地震全ての前後10分間を除外、さらにマグニチュード7以上の地震のシグナル到達時から1時間のウインドウを除いたタイムウインドウからランダムに1000のウインドウを抽出し、全観測点におけるスペクトル画像を切り出し教師データとした。データの数は169362となった。なお、システムの不具合によりスペクトル画像がルーチンで作成されなかった期間については、画像データの作成から除去してある。
このような手順で構築した深層CNNを用いた通常の地震LFEの検出・判別システムについて紹介し、さらに精度向上の取り組みについて紹介する。
我々はこれまでに、DONETデータを用いて通常の地震および浅部LFEの活動モニタと研究を行ってきた。しかしLFEは微動状の波形を示すために、通常の地震を前提としたシステムではトリガされず、目視によって検知を行ってきた。LFEの活動をモニタするためには、自動的に検知を行い、かつ通常の地震と区別する必要がある。
本発表では、深層機械学習を用いた人工知能(AI)による、通常の地震とLFE自動検出および、判別するシステムの開発について紹介する。前述のように、通常の地震とLFEは周波数成分や継続時間に違いがある。地震動波形は一次元時系列データの集合であるが、ランニングスペクトルを用いる事により周波数特性の違いとシグナルの継続時間を同時に表現可能である。従って、ランニングスペクトルの画像認識から、通常の地震とLFEを検出し、それぞれを判別する手法の開発を試みている。
手法:ここでは画像認識のために深層畳み込みニューラルネット(CNN)を使用し、教師データを用いた学習を行う。これを用いて連続スペクトル画像から、通常の地震およびLFEの検出を行い、さらに判別を行う。
DONETデータは品質管理のために、定期的にランニングスペクトルを作成している。ここでは、2-10Hzの成分について作成したプロットを用いる。ランニングスペクトル画像を強度の対数に比例したグレースケールに変換し、シグナル探索に適したサイズに変更する。1時間ごとに作成したプロットを接続し、1日長のスペクトル画像を作成する。
深層CNNを構築するには教師データが必要である。教師データとしてLFE、通常の地震、背景ノイズのカテゴリを用意し、以下の手順で64x64ピクセルの教師データ画像を作成した。このサイズの画像は2-10Hzのスペクトルの約225秒のウインドウに対応する。
LFEについては、2015年9-10月および2016年4月にあった活発な活動について作成したカタログからイベント発生時刻をリストし、これを基に画像を切り出す。継続するシグナルが画像の中心に近くなるよう、時間方向について適宜切り出し時刻をシフトした。374のイベントについて、シグナルが明瞭に見られた観測点から16710の教師データを作成した。通常の地震については、DONET自動震源決定による震源情報を基に作成した。イベント数がLFEと同じオーダーとなるよう、2016年1月と2月に発生した771の地震から27294の教師データを作成した。また、遠地地震によるシグナルの学習のため、2015年から2016年に起きたマグニチュード7以上の全世界の地震についてP波到達時刻の画像を切り出し、通常の地震の教師データに含めた。22の地震について、924の画像を作成した。ノイズについては、2015年から2016年について、カタログに掲載されたLFE、自動震源決定で検知された地震全ての前後10分間を除外、さらにマグニチュード7以上の地震のシグナル到達時から1時間のウインドウを除いたタイムウインドウからランダムに1000のウインドウを抽出し、全観測点におけるスペクトル画像を切り出し教師データとした。データの数は169362となった。なお、システムの不具合によりスペクトル画像がルーチンで作成されなかった期間については、画像データの作成から除去してある。
このような手順で構築した深層CNNを用いた通常の地震LFEの検出・判別システムについて紹介し、さらに精度向上の取り組みについて紹介する。