日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG33] 福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:北 和之(茨城大学理学部)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、篠原 厚(大阪大学、共同)、津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)

[MAG33-P01] 福島県大熊町で見つかった放射性セシウムを含む不溶性粒子の性質

*五十嵐 淳哉1張 子見1二宮 和彦1篠原 厚1 (1.大阪大学大学院理学研究科)

キーワード:福島第一原子力発電所、放射性核種環境動態、不溶性粒子、放射性セシウム

福島原子力発電所の事故により環境中に大量の放射性元素が放出された。一部の放射性元素は、可溶性のエアロゾルや気体状ではなく、SiO2の母材に放射性Csが濃集した水に不溶な粒子(以下、不溶性粒子)として放出されたことがわかっている[1]。この不溶性粒子は水に不溶であることから環境中に存在し続けると考えられるが、環境中でどのように移動するのか、風化等で最終的にどのように分解されるのかについてわかっていない。また不溶性で、高濃度でCsを濃集していることから、体内へ取り込まれた際には高濃度の放射性Csによる健康被害が懸念される。これまでの研究で、形状や放射性Csの比放射能の違いから様々なタイプの不溶性粒子が存在することが報告されており[2]、これらがどのような性質を持ち、いつ、どれだけ放出されたのかについてはわかっていない。今後の環境動態を調べる上で、これら様々なタイプの不溶性粒子の沈着量やその性質を調べることが求められる。本研究では福島県大熊町の土壌から不溶性粒子を取り出した。土壌中から不溶性粒子を単離する手法として、本研究では物質が媒質中を落下する際の沈降速度が粒径に依存する性質を利用し、粒径別に粒子をろ別した。その後、ろ別した粒子をガラス製バイヤルへ入れ、MilliQ水を加え攪拌した後、バイヤルの2分割、放射能測定、放射能が検出されたバイヤルについてさらにMilliQ水を加え2分割をするという一連の操作を計30回繰り返すことにより、不溶性粒子を単離した[3]。その後、カーボンテープ上で溶液を乾固し、SEM-EDS分析及びγ線測定を行った。分離した不溶性粒子を分析した結果、大熊町の土壌に沈着していた不溶性粒子は粒径が数µmのものから数百µmのものまで混在し、その放射能も数 Bq~数百 Bqと混在していることがわかった。またこれらの不溶性粒子はSi, Mg,Al,Feなどを主要構成元素とし、EDSスペクトル上でCsのピークが確認できるものとできないものが混在していた。本研究の結果、大熊町では粒径や放射性Csの比放射能の違いからタイプの異なる不溶性粒子が沈着し、各々汚染に寄与していることがわかった。これらの分析により、土壌中に存在する放射性Csに占める不溶性粒子の割合について求めたので、その詳細について報告する。[1]K.Adachi et al., Sci.Rep.3 (2013) 2554[2]T.Ono et al. JSAC. 2017, 66, 4 [3]栗原雄一 他、2017年日本放射化学年会・第61回放射化学討論会