[M-GI25] 山岳地域の自然環境変動

[MGI25-P02] 河川棲水生昆虫シロイロカゲロウ類の遺伝的構造と山岳地域による影響

★招待講演

*関根 一希¹ (1.立正大学地球環境科学部)

キーワード：系統地理、カゲロウ目、DNA

河川棲水生昆虫類であるシロイロカゲロウ類 (カゲロウ目) は、極めて高い同調的な一斉羽化をし、しばしば大量羽化を引き起こすことで知られる。羽化個体の寿命は極端に短く (長くても2時間), 飛翔力は非常に弱い。日本国内では、シロイロカゲロウ類の一種としてオオシロカゲロウ Ephoron shigae が知られ、しばしば初秋に大量一斉羽化が認められる。交通障害や自動車のスリップ事故を引き起こす害虫としてメディアにも取り上げられることもある。国内では本州・四国・九州において, 海外においては、極東ロシアや韓国に分布が認められる。

　本研究では、ミトコンドリアDNA COI遺伝子に基づいた日本および韓国のオオシロカゲロウの遺伝的構造を調べ、山脈による遺伝的構造への影響を評価した。また、モンゴルのセレンゲ川水系といった大きな水系に分布が認められるシロイロカゲロウ類の一種 Ephoron nigridorsum の遺伝子構造も調べ、日本および韓国のオオシロカゲロウの遺伝的構造と比較した。

　その結果、E. nigridorsum では長期安定型の遺伝的構造であるのに対して、韓国のオオシロカゲロウでは一斉放散型の遺伝的構造であり、韓半島の中央を縦断するソベク山脈による遺伝的分化は認められなかった。一方で、日本のオオシロカゲロウではフォッサマグナを境に、2つの大きな遺伝的構造 (東日本グループと西日本グループ) が認められた。日本アルプスや富士山などの山岳域がグループ間の地理的な障壁になっていることが示唆される。