日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI25] 山岳地域の自然環境変動

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:鈴木 啓助(信州大学理学部)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部理学科、共同)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)

[MGI25-P05] 定点カメラ画像を用いた立山室堂と千畳敷における高山植生のフェノロジーの時間的・空間的変動の解析

*井手 玲子1小熊 宏之1浜田 崇2 (1.国立研究開発法人 国立環境研究所、2.長野県自然環境保全研究所)

キーワード:RGB三原色、緑葉指数、緑葉開始、緑葉終了、消雪時期、微地形

地球温暖化により、極めて寒冷な環境条件で隔離的に生育する高山植物の展葉、開花、紅葉、落葉などの生物季節(フェノロジー)や分布域の変化が各地で報告され、高山生態系の気候変動に対する脆弱性が危惧されている。多雪を特徴とする日本の高山帯においては積雪や消雪時期が生物の活動時期を決定する重要な要因となる。そこで、消雪と植生フェノロジーを高頻度・高解像度で把握するため、2011年から山小屋などに自動撮影デジタルカメラを設置し定点観測を行ってきた。本研究では高解像度の一眼レフカメラによる定点撮影画像の解析から、高山植生の展葉や落葉時期などのフェノロジーの空間分布と年変動を検出し、消雪時期や地形などの環境要因との関係を考察した。

今回の解析には、北アルプス立山室堂(標高約2450m)から雄山方面を撮影した2011-2017年の画像と、中央アルプス千畳敷(約2650m)から極楽平方面を撮影した2013-2017年の画像を用いた。解像度はそれぞれ2100万、1600万画素でjpg 形式で記録されている。これらの画像から自動的にRGB三原色の画素値を抽出し、植生の光合成活動を反映する指標として緑色の割合 (Green Ratio: RGBの合計値に対するGの割合)を算出した。画素ごとのGreen Ratioの時系列変化から、変化率が最大になる日を緑葉の開始日と終了日とした。
その結果、高山帯の複雑な地形を反映した消雪時期と展葉時期の空間的多様性が明らかになった。さらに、気象条件による消雪時期の年変動が大きく、それに伴って植生の展葉時期や活動期間も大きな変動を示した。このような高解像度の定点カメラ画像の解析により、高山植生のフェノロジーの時間的・空間的変動の検出が可能となった。さらに長期的なモニタリングを継続することにより、将来の気候変動による高山生態系への影響の評価と予測が期待できる。