[MGI27-P03] 鉱床での金属濃度の地球統計学的モデリングにおける地質情報利用の有効性
持続可能な社会作りや技術革新のために,金属資源の需要は年々増加している.特定の鉱床における金属品位について高精度な空間推定が可能となれば,その鉱床の成因解明や同タイプの鉱床調査・開発への貢献が期待でき,金属資源の安定供給へと繋がる.そこで本研究では,火山性塊状硫化物(VMS)タイプである黒鉱鉱床,および斑岩銅鉱床をケーススタディとして,高精度での品位分布推定を可能にする多変量地球統計学的手法の開発を目指し,その地質情報の組み込みを試みた.
大規模な黒鉱鉱床として松峰鉱山(秋田県大館市)を選び,調査ボーリングデータが密集している領域を解析の対象とした.ボーリング数は77本であり,いずれも垂直,あるいはそれに近い.解析領域は,データ密度が最も高くなるように軸を定め,水平方向から8°傾くようにxy軸を取った.その大きさは,x=420m,y=970m,z=280mであり,領域を格子で区切った.
金属濃度データの空間モデリングにおける地質情報の利用としては,次の2つの手法を検討した.前処理として,地質柱状図に記載の地質を複数のタイプにまとめる.手法1は,各ボーリングデータで注目する地質タイプは1,それ以外は0を与えるというバイナリーセットを作成し,これと主要金属濃度を組み合わせて主成分分析(PCA)を行うという手法である.得られた主成分値に対してクリギング計算,さらにその逆解析によって,地質タイプと金属濃度,および金属ペアの相関性を考慮する.これをPCA-kriging(PCAK)と称する.手法2は,地質タイプごとに主要金属濃度のクリギング計算を行い,平行して作成した地質モデルと重ね合わせることで,各地質タイプの分布範囲にクリギング計算結果を合わせる手法である.そのため,地質データのバイナリーセットにPCAKを適用し,地質モデルを作成した.これは,地質タイプと金属濃度の相関性に重点を置く手法であり,kriging with geological constraint(KGC)と称する.
金属濃度データに含まれる空間的相関構造の異方性を考慮して,水平方向と垂直方向のバリオグラムを描き,近似曲線として球モデルを用いた.それぞれのレンジから近傍データ範囲を決定し,レンジ内のデータはすべて計算に用いた.また,レンジが短く解析領域全体を推定できない場合は,水平と垂直方向のレンジの比率は変えず,近傍データ範囲を拡大した.
以上の設定のもとで,普通クリギング(ordinary kriging: OK),PCAK,KGCによる推定精度を,cross-validation(以下 CV)によって比較した.CVの相関係数(r)が大きい順に並べると,銅は,KGC・OK・PCAK,鉛は,PCAK・KGC・OK,亜鉛は,OK・KGC・PCAKとなった.rの差が大きいのは銅と鉛であり,OKと比較すると,銅のKGCは0.014増加し,鉛のPCAKは0.010増加した.亜鉛のrはほぼ同じであった.また,KGC,PCAKに共通して中濃度部での推定値がばらつき,これが精度を下げているが,高濃度部での精度は上昇して,特にKGCでは平滑化効果を軽減できた.また,地球統計学的シミュレーション法による結果と比較すると,高濃度部の品位はより正確になり,分布形態も明瞭に表されるようになった.鉱量評価では,高濃度部の位置と品位を正確に推定することが重要であるため,KGCは有効であることが確かめられた.さらに,地質モデルと金属高濃度部との重ね合わせにより,鉱液の流動形態の推定,および金属濃度の濃集プロセスの解釈に役立つことも明らかになった.スラウェシ島の斑岩銅鉱床に対してもKGCを適用し,金属によって濃集部の位置が異なることなどの特徴を抽出している.
大規模な黒鉱鉱床として松峰鉱山(秋田県大館市)を選び,調査ボーリングデータが密集している領域を解析の対象とした.ボーリング数は77本であり,いずれも垂直,あるいはそれに近い.解析領域は,データ密度が最も高くなるように軸を定め,水平方向から8°傾くようにxy軸を取った.その大きさは,x=420m,y=970m,z=280mであり,領域を格子で区切った.
金属濃度データの空間モデリングにおける地質情報の利用としては,次の2つの手法を検討した.前処理として,地質柱状図に記載の地質を複数のタイプにまとめる.手法1は,各ボーリングデータで注目する地質タイプは1,それ以外は0を与えるというバイナリーセットを作成し,これと主要金属濃度を組み合わせて主成分分析(PCA)を行うという手法である.得られた主成分値に対してクリギング計算,さらにその逆解析によって,地質タイプと金属濃度,および金属ペアの相関性を考慮する.これをPCA-kriging(PCAK)と称する.手法2は,地質タイプごとに主要金属濃度のクリギング計算を行い,平行して作成した地質モデルと重ね合わせることで,各地質タイプの分布範囲にクリギング計算結果を合わせる手法である.そのため,地質データのバイナリーセットにPCAKを適用し,地質モデルを作成した.これは,地質タイプと金属濃度の相関性に重点を置く手法であり,kriging with geological constraint(KGC)と称する.
金属濃度データに含まれる空間的相関構造の異方性を考慮して,水平方向と垂直方向のバリオグラムを描き,近似曲線として球モデルを用いた.それぞれのレンジから近傍データ範囲を決定し,レンジ内のデータはすべて計算に用いた.また,レンジが短く解析領域全体を推定できない場合は,水平と垂直方向のレンジの比率は変えず,近傍データ範囲を拡大した.
以上の設定のもとで,普通クリギング(ordinary kriging: OK),PCAK,KGCによる推定精度を,cross-validation(以下 CV)によって比較した.CVの相関係数(r)が大きい順に並べると,銅は,KGC・OK・PCAK,鉛は,PCAK・KGC・OK,亜鉛は,OK・KGC・PCAKとなった.rの差が大きいのは銅と鉛であり,OKと比較すると,銅のKGCは0.014増加し,鉛のPCAKは0.010増加した.亜鉛のrはほぼ同じであった.また,KGC,PCAKに共通して中濃度部での推定値がばらつき,これが精度を下げているが,高濃度部での精度は上昇して,特にKGCでは平滑化効果を軽減できた.また,地球統計学的シミュレーション法による結果と比較すると,高濃度部の品位はより正確になり,分布形態も明瞭に表されるようになった.鉱量評価では,高濃度部の位置と品位を正確に推定することが重要であるため,KGCは有効であることが確かめられた.さらに,地質モデルと金属高濃度部との重ね合わせにより,鉱液の流動形態の推定,および金属濃度の濃集プロセスの解釈に役立つことも明らかになった.スラウェシ島の斑岩銅鉱床に対してもKGCを適用し,金属によって濃集部の位置が異なることなどの特徴を抽出している.