[MIS07-P03] ノルセサイトBaMg(CO3)2の水溶液成長
キーワード:ノルセサイト、溶液成長、炭酸塩
ノルセサイトBaMg(CO3)2は空間群R32に属し(ドロマイトCaMg(CO3)2の空間群:R3―)、非常に強い非対称性を持っている。そのため、ノルセサイトは高い複屈折を示し(ノルセサイト:0.175、水晶:0.009)、圧電結晶として期待できる。更に、BaTiO3やPb(Zr,Ti)O3などの従来の圧電結晶は焼結法や融液法によって合成されるが、ノルセサイトは水溶液中で合成が可能である。加えて、炭酸塩は水熱合成を用いることで比較的容易に大きな単結晶が得られる [1]。故に、ノルセサイトを圧電結晶として利用することは育成の観点からも有望である。
ノルセサイトの合成は、Hood et al.(1973)により初めて報告された[2]。最近ではPinaらによってノルセサイトは以下の様な2段階の反応によって生成すると報告されている[3]
Amorphous phase (Mg,Ba,Cl,Na,C,O) →Na3Mg(CO3)2Cl + BaCO3
Na3Mg(CO3)2Cl + BaCO3 →BaMg(CO3)2 + 3Na+ + Cl- + CO32-
このように、ノルセサイトの生成機構は複雑である。そのため、ノルセサイトの育成を制御するためには、ノルセサイトの結晶化機構の支配的な因子を理解することが必要不可欠である。本研究では、BaCl2-MgCl2-NaHCO3混合水溶液中に生成する沈殿物を光学顕微鏡及び粉末XRDにより直接観察し、ノルセサイトの水溶液からの結晶化を調べた。
0.3M BaCl2・2H2O、0.3M MgCl2・6H2O、0.125M NaHCO3を各温度(50~90℃)の純水200mLに溶解し、加熱、撹拌を3週間行った。生成した沈殿物の経時変化を光学顕微鏡と粉末X線を用いて、観察・計測した。
はじめに、60℃で生成した沈殿物の経時変化を観察した。混合した瞬間、針状のBaCO3(Witherite)の沈殿物が析出した。一方、216時間後に粒状のBaMg(CO3)2 (Norsethite)が生成した。更に、結晶化を定量的に理解するため、偏光顕微鏡と粉末XRDからウィッセライトの長軸方向のサイズLとノルセサイトの(104)面の回折強度I104の経時変化を計測した。ウィッセライトは48時間後まで大きくなった。しかしながら、48時間を過ぎるとLは小さくなり、ウィッセライトは徐々に溶解していった。一方、I104は200時間を超えると増加した。これらの結果は、ノルセサイトはウィッセライトからの固相転移ではなく、液相媒介相転移により析出することを示している。また60℃以外の各温度でもノルセサイトは液相媒介相転移により生成した。 また、ノルセサイトの(104)面の回折強度の近似直線の外挿より、ノルセサイトの誘導期は182時間と分かった。発表当日は、種々の温度でのノルセサイトの溶液成長の律速過程について議論する予定である。
[1] Shin-ichi Hirano and Ko-ichi Kikuta, J. Cryst. Growth,351-356, 1989.
[2] Hood et al., Am. Mineral, 471-474, 1974.
[3] C.M.Pina and C.Pimentel, Dolomite, 115-139, 2017.
ノルセサイトの合成は、Hood et al.(1973)により初めて報告された[2]。最近ではPinaらによってノルセサイトは以下の様な2段階の反応によって生成すると報告されている[3]
Amorphous phase (Mg,Ba,Cl,Na,C,O) →Na3Mg(CO3)2Cl + BaCO3
Na3Mg(CO3)2Cl + BaCO3 →BaMg(CO3)2 + 3Na+ + Cl- + CO32-
このように、ノルセサイトの生成機構は複雑である。そのため、ノルセサイトの育成を制御するためには、ノルセサイトの結晶化機構の支配的な因子を理解することが必要不可欠である。本研究では、BaCl2-MgCl2-NaHCO3混合水溶液中に生成する沈殿物を光学顕微鏡及び粉末XRDにより直接観察し、ノルセサイトの水溶液からの結晶化を調べた。
0.3M BaCl2・2H2O、0.3M MgCl2・6H2O、0.125M NaHCO3を各温度(50~90℃)の純水200mLに溶解し、加熱、撹拌を3週間行った。生成した沈殿物の経時変化を光学顕微鏡と粉末X線を用いて、観察・計測した。
はじめに、60℃で生成した沈殿物の経時変化を観察した。混合した瞬間、針状のBaCO3(Witherite)の沈殿物が析出した。一方、216時間後に粒状のBaMg(CO3)2 (Norsethite)が生成した。更に、結晶化を定量的に理解するため、偏光顕微鏡と粉末XRDからウィッセライトの長軸方向のサイズLとノルセサイトの(104)面の回折強度I104の経時変化を計測した。ウィッセライトは48時間後まで大きくなった。しかしながら、48時間を過ぎるとLは小さくなり、ウィッセライトは徐々に溶解していった。一方、I104は200時間を超えると増加した。これらの結果は、ノルセサイトはウィッセライトからの固相転移ではなく、液相媒介相転移により析出することを示している。また60℃以外の各温度でもノルセサイトは液相媒介相転移により生成した。 また、ノルセサイトの(104)面の回折強度の近似直線の外挿より、ノルセサイトの誘導期は182時間と分かった。発表当日は、種々の温度でのノルセサイトの溶液成長の律速過程について議論する予定である。
[1] Shin-ichi Hirano and Ko-ichi Kikuta, J. Cryst. Growth,351-356, 1989.
[2] Hood et al., Am. Mineral, 471-474, 1974.
[3] C.M.Pina and C.Pimentel, Dolomite, 115-139, 2017.