日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット)、長尾 年恭(東海大学海洋研究所)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

[MIS09-P02] 大地震発生直前の超微小地震の検出と応用

*藤縄 幸雄1天野 慎史2宮川 美南子2野田 洋一3 (1.株式会社ミエルカ防災、2.(一般社)防災減災技術開発機構、3.(有)テラテクニカ)

キーワード:マイクロクラック、前兆現象、地震活動、地震動予測

1. 始めに
地震前兆現象の候補の一つとして、地震の数日前から破壊域に数百Hzの微小破壊(マイクロクラック)があることを報告した(Fujinawa et al, 2011; Fujinawa and Noda,1015)。最近、地震動速報の性能向上の研究の過程で、大きさ1ガル程度、継続時間が1秒以下の微小な地震(イベント)に注目している。その特性をまとめ、前兆現象と考えているマイクロクラックとの関連で分析したので報告する。


2.観測データ
熊本地震のような直下型地震(評価点のごく近くで起きる地震)の地震動予測のために、P波からS波の大きさを推定する方法の開発を進めている。そのため、防災科研のK-NETデータを使い解析をした。特に2016年の4月に発生した熊本地震の前震・主震・余震30地震と鳥取地震、茨城県南部地震各5地震などを使い解析した。震央距離が数km~10kmであることから、地震にごく近い場所で発生したものである。


3.特性
地震の直前(0s-2s)の短い時間に、ほぼ1ガルの大きさで、継続時間1s程度(の直前微小イベント(E))がほとんどの場合に存在することが分かった。マグニチュードは、経験式(津村、1967)を使うと-0.5程度でマイクロクラックの場合の-6よりはるかに大きい。このイベントの特性の概要を下表に示す。






4.議論

 殆どすべての地震の発生直前に微小イベントが発生していることから、破壊現象に普遍的に伴うものと推定される。そうであるなら、先のマイクロクラックの報告で予測した「すべての地震で地震直前に発生する」という仮説に沿った現象が起きていると言えそうである。

本震直前の地震活動に関する研究は、1990年代初めから精力的に実施され、破壊の初期フェーズ(始まりの始まり)の解明が図られた(Umeda, 1990; Iio, 1992;大中・松浦、2002)。今回検出したイベントとそれらの現象と関係について、さらに解析を進めたところ、報告したイベントは小さい地震(前震)、初期フェーズはP波につながっていることが分かった。いずれにしてもノイズではない実現象である。しかし、地震の前20秒まえに限った解析であることから、もっと長い記録を使い解析する必要がある。

また、先のマイクロクラックの報告で予測した「すべての地震で地震直前に発生する」という仮説に沿った現象とは、「前兆」時間の違いがあり別のものと言えそうである。一方地震動予測の技術の観点からすると、P波検知を10分の数秒から10秒程度前にできる可能性がある。いわゆる地震予知とは異なるが、実用化されている緊急地震速報の利用度を「大きく」上げることが期待される。


5.結論
強震観測データの解析で、熊本地震では主震・余震の調べた30地震全てで、1個以上10以下の先行微小イベント(継続時間1s程度、強度1gal程度)が発生している。破壊の初期フェーズ、直前の微小地震の研究が地震動予測技術の向上につながることは確実であり、また我々の仮説「地震の直前にマイクロクラックが発生し、それを使って地震発生の直前か否かを判定できる」の新たな手法が探せる可能性もあると考えている。強震データとともに、Hi-Netデータを使い、さらなる解析を進める必要がある。



謝辞:本研究では、国立研究開発法人防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)データを使用させていただきました。