[MIS11-P19] 四国南西部沿岸,宿毛ボーリングコアの概要および鬼界アカホヤ火山灰に伴うイベント堆積物
キーワード:鬼界アカホヤ火山灰、イベント堆積物、カルデラ噴火、津波、宿毛平野、四国南西部
最近,南九州では,7300年前の鬼界カルデラの破局的噴火に伴って放出された噴出物の直下に,粗粒なイベント堆積物が報告されており,これらは鬼界カルデラ噴火に関連した津波痕跡であった可能性が示唆されている(七山ほか,2017).四国南西部の宿毛平野は太平洋に面する宿毛湾に流入する松田川によって主に形成された沖積低地である.本研究では,四国南西岸域における鬼界アカホヤ火山灰に付随するイベント堆積物の痕跡を検討する目的で,同平野の北縁部の宿毛市錦,錦西谷川河口付近の干拓地で全長38.5 mのオールコアボーリング(宿毛コア)を実施した.この掘削地点は松田川の流入位置から700 m程度離れた小規模な谷の出口に位置しているため,大規模な浸食作用の影響を受けづらく過去の津波によって運搬された堆積物が保存されやすいと期待される.本講演では宿毛コアの概要およびイベント堆積物について報告する.
宿毛コアの堆積物の層相,貝形虫・貝化石分析および植物片のAMS放射性炭素(14C)年代測定結果に基づき,下位から,網状河川礫層,河川~エスチュアリー堆積物,上方深海化する内湾泥質堆積物,鬼界アカホヤ(K-Ah:町田・新井,2003)火山灰層およびイベント堆積物,上方浅海化する内湾泥底堆積物,干潟堆積物を認定した.
網状河川礫層(標高-36.46~-32.90 m):基盤岩を覆う角礫~シルト質砂礫層からなる非海成層である.下部には大礫が含まれ,淘汰は不良である.本層上部の木片から10,160-9,780 cal BP の年代値が得られた.
河川~エスチュアリー堆積物(標高-32.90~-26.25 m):砂礫互層を主体とし,木片・炭質物片が散在する.礫層は中礫主体で,上部層準は泥質粒子に富み,貝殻片を含む.本層上部より9,500~9,400 cal BPの年代値が得られた.
上方深海化する内湾泥底堆積物(標高-26.25~-19.07 m):泥を主体とし,全体的に貝殻片や腐植物片に富む.下位の砂礫層から,有機質泥層を挟んで泥層へと細粒化し,巣穴などの生物擾乱が認められることから,海面上昇に伴って内湾底環境で形成された堆積物と解釈される.本層下部および上部の木片から9,000~7,700 cal BPの年代値が得られた.
K-Ah火山灰層およびイベント堆積物(標高-19.07~-12.56 m):下部40 cmの角礫層およびそれを直接覆うK-Ahリワーク堆積物によって構成される.角礫層は明瞭な基底面を有し,多量の角礫,貝類化石片および少量の平板状および軽石型火山ガラスを含む.本礫層から,岩礁性の貝化石片(キクザルガイ属他),サンゴ化石(トゲキクメイシ属)および外洋性の貝形虫が産出した.K-Ahリワーク堆積物は火山ガラスを主体とし,平行葉理が発達する.
上方浅海化する内湾泥底堆積物(標高-12.56~-1.16 m):シルト~極細粒砂を主体とし,多くの生物擾乱の痕跡が認められる.下部ではマメウラシマガイなどの内湾泥底に多く見られる貝化石が多く観察されるが,上部ではマガキ類やアサリなど汽水域や浅海域にみられるものが多く認められる.本層下部~上部の植物片から6,800~2,700 cal BPの年代値が得られた.
干潟堆積物(標高-1.16~-0.36 m):下部45 cmは貝化石,植物化石密集層を伴う細礫層であり,上部35 cmは生物擾乱の卓越する泥質砂礫層である.本層下部の木片から430-290 cal BPの年代値が得られた.
K-Ah火山灰直下の角礫層は,強い波浪によって外洋ないし岩礁に生息していた生物およびK-Ah火山灰を削り取って運搬し,内湾底の泥上に突発的に堆積したイベント堆積物と判断される.このイベント堆積物は,K-Ah火山灰を含み,多量のK-Ahリワーク堆積物に埋積されていることから,K-Ah火山灰の降下後,K-Ah再堆積以前に堆積したものと推察される.南九州および大分平野においてアカホヤ噴出物の直下にイベント堆積物が確認されており(藤原ほか,2010;七山ほか,2017),これらが津波の痕跡と考えられていることを考慮すると,今回宿毛コアで記載されたアカホヤ火山灰層直下で確認されたイベント層も同様に津波起源の可能性がある.
宿毛コアの堆積物の層相,貝形虫・貝化石分析および植物片のAMS放射性炭素(14C)年代測定結果に基づき,下位から,網状河川礫層,河川~エスチュアリー堆積物,上方深海化する内湾泥質堆積物,鬼界アカホヤ(K-Ah:町田・新井,2003)火山灰層およびイベント堆積物,上方浅海化する内湾泥底堆積物,干潟堆積物を認定した.
網状河川礫層(標高-36.46~-32.90 m):基盤岩を覆う角礫~シルト質砂礫層からなる非海成層である.下部には大礫が含まれ,淘汰は不良である.本層上部の木片から10,160-9,780 cal BP の年代値が得られた.
河川~エスチュアリー堆積物(標高-32.90~-26.25 m):砂礫互層を主体とし,木片・炭質物片が散在する.礫層は中礫主体で,上部層準は泥質粒子に富み,貝殻片を含む.本層上部より9,500~9,400 cal BPの年代値が得られた.
上方深海化する内湾泥底堆積物(標高-26.25~-19.07 m):泥を主体とし,全体的に貝殻片や腐植物片に富む.下位の砂礫層から,有機質泥層を挟んで泥層へと細粒化し,巣穴などの生物擾乱が認められることから,海面上昇に伴って内湾底環境で形成された堆積物と解釈される.本層下部および上部の木片から9,000~7,700 cal BPの年代値が得られた.
K-Ah火山灰層およびイベント堆積物(標高-19.07~-12.56 m):下部40 cmの角礫層およびそれを直接覆うK-Ahリワーク堆積物によって構成される.角礫層は明瞭な基底面を有し,多量の角礫,貝類化石片および少量の平板状および軽石型火山ガラスを含む.本礫層から,岩礁性の貝化石片(キクザルガイ属他),サンゴ化石(トゲキクメイシ属)および外洋性の貝形虫が産出した.K-Ahリワーク堆積物は火山ガラスを主体とし,平行葉理が発達する.
上方浅海化する内湾泥底堆積物(標高-12.56~-1.16 m):シルト~極細粒砂を主体とし,多くの生物擾乱の痕跡が認められる.下部ではマメウラシマガイなどの内湾泥底に多く見られる貝化石が多く観察されるが,上部ではマガキ類やアサリなど汽水域や浅海域にみられるものが多く認められる.本層下部~上部の植物片から6,800~2,700 cal BPの年代値が得られた.
干潟堆積物(標高-1.16~-0.36 m):下部45 cmは貝化石,植物化石密集層を伴う細礫層であり,上部35 cmは生物擾乱の卓越する泥質砂礫層である.本層下部の木片から430-290 cal BPの年代値が得られた.
K-Ah火山灰直下の角礫層は,強い波浪によって外洋ないし岩礁に生息していた生物およびK-Ah火山灰を削り取って運搬し,内湾底の泥上に突発的に堆積したイベント堆積物と判断される.このイベント堆積物は,K-Ah火山灰を含み,多量のK-Ahリワーク堆積物に埋積されていることから,K-Ah火山灰の降下後,K-Ah再堆積以前に堆積したものと推察される.南九州および大分平野においてアカホヤ噴出物の直下にイベント堆積物が確認されており(藤原ほか,2010;七山ほか,2017),これらが津波の痕跡と考えられていることを考慮すると,今回宿毛コアで記載されたアカホヤ火山灰層直下で確認されたイベント層も同様に津波起源の可能性がある.