日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] 津波堆積物

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:篠崎 鉄哉(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、千葉 崇(一般財団法人海上災害防止センター)、石村 大輔(首都大学東京大学院都市環境科学研究科地理学教室)

[MIS11-P23] 台湾東海岸における地中レーダを用いた津波堆積物の検出

祖慶 真也1、*中村 衛1陳 浩維2 (1.琉球大学理学部、2.台湾國立中央大學)

キーワード:津波、台湾、地中レーダ

地中レーダを用いて台湾東部海岸の成功と膽曼で津波堆積物層の検出を試みた。成功では測線長15~86mのGPR測線を6本、標高18-22mの段丘上で実施した。膽曼では測線長18~26mのGPR測線を2本、標高21mの段丘上で実施した。使用した周波数は成功では250 MHzと500 MHz、膽曼では500 MHzである。

成功での調査の結果、第1層が基盤の上に厚さ約1mで分布している形状がGPRプロファイルと、第1層に多く含まれる散乱体から明らかになった。第1層は礫を含む砂質シルトであり、この礫が散乱体としてGPRプロファイルでイメージされたと考えられる。この層はこの層は弱いものの級化構造を示しており、かつ海成化石(サンゴ、二枚貝)を含んでいた。これら化石は層の下部に特に多く分布していた。サンゴ化石の14C年代は1785~1620 Cal BP and 1910~1785 Cal BPを示していた。この年代は段丘の形成年代(3600~6000年前)よりも新しい。これらのことから海成化石は段丘形成から2000年以上後(1750年前以降)に、津波または大規模波浪によって段丘に堆積したと考えた。

しかし、成功の標高21~22mではこれらの時期の海成化石は検出出来なかった。標高21~22mでのサンゴ化石の14C年代は3799~3502 Cal BPであり、段丘形成年代とほぼ等しい。このことから、標高18mで検出した津波堆積物は標高21~22mには分布していないと考えられる。このことは、津波の遡上高が約18mであった、または標高21~22mではサンゴ化石等が運搬されてこない程度に流速が低下していた可能性がある。つまり、成功での津波の遡上高は約18m程度であったと考えた。津波・大規模波浪の襲来時期は1750年前以降と推定した。海成段丘の高度と形成年代から推定した成功での隆起速度(3.0-5.0 mm/yr)を用いて津波・大規模波浪到来時の現地の標高を推定した結果、遡上高は10~18mとなった。幅が広い理由は、津波・大規模波浪襲来時期に幅広い不確実性があるためである。

膽曼では段丘形成後に津波または波浪によって堆積した可能性のある化石を検出出来なかった。このことは、大津波・大規模波浪は成功周辺には襲来したものの、膽曼には襲来しなかった可能性があることを示している。

大規模津波・大規模波浪の襲来地域は成功近傍のみに分布していた。ここで、これが津波に起因するとした場合の波源域を考えた。M8.3の逆断層型地震が台湾東海岸沖で発生した場合、成功での遡上高は15-18mとなる。しかしこの場合、高い遡上高の領域は台湾東海岸に沿って広範囲に分布する。もし成功沖で海底地滑りが発生した場合、その遡上高は20mを超え、かつ成功周辺に限定される。成功沖では約3000年前に海底地滑りが発生し、大津波が発生した可能性がある(Lallemand et al., 2016)。現時点ではどちらが妥当か判断できないが、もし成功での堆積物が津波に起因するとした場合、これら逆断層および海底地滑りは台湾東部での大津波の発生要因として考慮すべきだろう。