日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 生物地球化学

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構、共同)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS14-P04] 静岡県を流れる天竜川の河川水質にみられる流域環境及び台風の影響

*鈴木 謙介1横尾 頼子1 (1.同志社大学理工学部)

キーワード:天竜川、台風、主要イオン組成、微量元素濃度

静岡県を流れる天竜川の流下に伴う河川水質変化及び,台風通過前後の水質変化を調べ,流域環境及び台風が天竜川の水質に与える影響を考察した.2017年7月21日に発生した台風5号が日本列島を通過した8月7日から8日にかけてと9日に天竜川本流18地点と支流16地点で河川水を採取し,主要イオンおよび微量元素濃度を測定した.
天竜川下流域の河川水中の全ての主要イオン濃度は全ての地点でほぼ同じで,流下に伴う変化はみられなかった.このことから,天竜川下流域の本流における河川水中の主要イオン濃度に与える支流や遡上海水の流入及び,人間活動の影響は小さいことが明らかとなった.
台風通過1日後に採水された河川水質の流下に伴う変化から次のことが分かった.天竜川本流の河川水質は上流から下流まで一貫してCa-HCO3型であり,それは上流域の地質に起因すると考えられる.佐久間ダムから下流10 kmの地点で全ての主要イオン濃度が減少していた.これは,佐久間ダム下において,本流よりも流量が多くイオン濃度の低い支流が合流することによると考えられる.また,佐久間ダムから下流13 kmの地点で全ての主要イオン濃度が増加した.これは,本流よりもイオン濃度が高い支流と佐久間ダムの放流水の合流によると考えらえる.発電に必要な落差が得られる場所が佐久間ダムから約12 km離れた場所で,そこまで水路を引き放水するためである.佐久間ダムから下流10 kmから40 kmの間でAl,Fe,Mn,Ti濃度が増加した.これは,土壌や堆積物に含まれるそれらの元素の流入によると考えられる.
台風通過前後の天竜川における河川水の水質変化から,台風が天竜川本流に与える影響について次のことが分かった.台風通過前後において天竜川本流の河川水質は上流から下流まで一貫してCa-HCO3型であることから,主要イオン組成比に与える台風の影響は小さい.台風通過後の天竜川下流域の本流における河川水中の主要イオン濃度は台風通過前よりも低くなっていた.これは台風通過前の河川水よりも濃度が低い雨水の流入によって河川水が希釈されたことを示している.一方で,台風通過後の天竜川下流域の本流における河川水中のAl,Fe,Mn,Tiの濃度が通過前よりも高くなっていた.これは台風の豪雨によって流され懸濁した土壌や堆積物に含まれるそれらの元素の流入によると考えられる.