日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科、共同)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

[MIS17-P11] 間隙水及びガスの生物地球化学的特徴から見る日高トラフのガスチムニー内での炭素の生物地球化学的動態

*間々田 剛志1戸丸 仁1松本 良2 (1.千葉大学大学院理学研究科地球科学コース、2.明治大学ガスハイドレート研究所)

キーワード:ガスチムニー、硫酸―メタン境界

北海道沖の日高トラフではマウンド―ポックマーク地形に関連するガスチムニー構造、深部からの膨大なガスの移動を示すメタンプルームによって特徴づけられている。上越沖などの顕著なガスチムニー構造が発達している海域では、高濃度となったメタンによって海底付近での自生炭酸塩の沈殿、表層型メタンハイドレートの生成、化学合成生物群集の発達などが観測されている。このような環境ではメタン(CH4)と硫酸イオン(SO42-)を共消費する嫌気的メタン酸化が卓越して、硫酸イオンが浅い堆積物中で枯渇することが知られている。メタンの酸化に伴って生成される溶存無機炭素は間隙水中のカルシウムイオンと結合し炭酸塩を沈殿させるだけではなく、微生物によるメタン生成反応にも利用されることによって、無機炭素の一部は再びメタンとなる。それゆえ炭素は硫酸イオンが枯渇する深度(Sulfate Methane Interface; SMI)では非常に重要な物質である。本研究では間隙水溶存イオン濃度、炭化水素濃度、溶存炭素の炭素安定同位体比(δ13C)を分析することによって日高トラフのガスチムニー周辺において表層堆積物の地化学的環境を特徴づける炭素の化学反応を明らかにし、その化学的形態の変化について考察する。

化学合成生物の一種であるシロウリガイの群集が発達している海域では浅い深度でSMIが出現し、硫酸イオンが枯渇して還元的な環境が形成されていることが分かった。また炭酸塩岩が発達する海域ではさらにSMIが浅く、カルシウムイオンが他の海域より低濃度であった。この結果からこの海域ではメタンフラックスが高く、より炭酸塩の生成が速いことが示された。ヘッドスペースガスの炭化水素組成とδ13CCH4からは、どの海域でも日高トラフの表層堆積物中では微生物起源メタンが卓越していることが示されたが、マウンドの中央部で採取されたコアでは特に深度の増加とともにδ13CCH4が急速に上昇した。このことは熱分解起源メタンの流入量が他の地点よりも多いことを示している。これらの結果から、炭素の生物地球化学的動態は海域だけでなく1つのガスチムニー上の位置によっても異なることが明らかとなった。