日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科、共同)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

[MIS17-P12] 鳥が首海脚の微化石群集から認められたメタン湧出イベント

*大井 剛志1松本 良1 (1.明治大学 研究知財戦略機構)

キーワード:鳥が首海脚、有孔虫、メタンシープ

上越市沖の日本海東縁鳥が首海脚には,東西方向に延び起伏の激しい頂部を有する発達したガスチムニーマウンドが分布している.本研究試料は,鳥が首海脚において多数観察されたメタンシープの中心部の東西(水深550~600m)より採取された2本のピストンコア(コア長;4-5m)である.西側のPC1704はマウンド斜面に位置し,東側のPC1706はマウンド上に位置し,どちらもメタンシープやガスチムニーの範囲の外側に位置する.コアの年代モデルは,珪藻化石帯のA帯~C帯における境界年代(A/B;8ka, B/C;16ka)および浮遊性有孔虫殻を使ったAMS14C年代値に基づいて作成された.
そのうち,マウンド上のメタンシープの多いチムニー中心の東部で採取されたPC1706では,コア深度340cmからメタン湧出と関連する底生有孔虫化石のRutherfordoides sp.が,貧酸素種とともに確認された.これらの個体の中には,長径200µmを超える中型サイズの個体が多い.同一試料より抽出された浮遊性有孔虫殻の14C年代値は,23.28kaと見積もられた.さらに,それより上位の320~240cmbsfにかけては,最終氷期最盛期(LGM)に特徴的な底生有孔虫の乏しい群集の中に,Rutherfordoides sp.がわずかながら産出し続けている.これらの底生有孔虫は,長径100µm未満の小さな個体が多い.このように,PC1706で認められたRutherfordoides個体の産出区間は,14C年代よりLGMの24-20kaに相当し,珪藻化石による寒冷帯(C帯)の分布とも矛盾しない.したがって,鳥が首海脚の本調査チムニーマウンド上では,海水準低下に伴いメタン湧出活動のシープ域の範囲が数百mほど広がったと推定される.これらの産状は,底生有孔虫殻の炭素同位体比負異常と本種の関係が議論されている海鷹海脚の結果と類似する部分が多い.
一方,崩落崖が多く認められるマウンド斜面より採取されたPC1704では,マウンド頂部のPC1706とは異なる堆積年代が得られた.特に,PC1704における14C年代(22.04 ka)が算出されたコア深度96cmbsfより上位(若い)の堆積速度は,その下位と比べて3倍以上も遅くなっている.このような異常な堆積速度の低下は,ハイドレートマウンドの成長に伴う急斜面の形成過程に起因していると予想される.