[MTT35-P03] 重力偏差テンソルを用いた横ずれ断層位置の推定
キーワード:横ずれ断層、重力偏差テンソル、断層位置推定
一般に、純粋な横ずれ断層は顕著な密度差をもつ構造境界を形成しないため、横ずれ断層の位置を、重力異常を用いて抽出することは難しい。本研究は、重力偏差テンソルを用いて横ずれ断層の位置を推定する新しい方法を提案する。
地下に断層構造が存在するとき、重力異常は大きく変化するため、断層位置推定では重力探査がよく採用されてきた。この重力異常の空間的な変化を明確にするため、水平一次微分や鉛直一次微分がよく採用されてきた。断層構造のような構造急変部はエッジとよばれ、エッジを強調し、エッジの位置を明示する水平一次微分や鉛直一次微分はエッジ強調手法とよばれる。近年では、TDX, ILP, CLP, THVHといった、より感度の高いエッジ強調手法が研究、開発されてきている(例えば, Cooper and Cowan, 2006; Ma, 2013; Li et al., 2014; Zhang et al., 2014)。しかしながら、これらは、密度差をもつ構造境界の抽出を目的としているため、横ずれ断層の位置推定には不向きである。少なくとも単独での使用では、横ずれ断層の位置推定は難しい。
本研究では、まず、横ずれ断層運動が作る重力異常と重力偏差テンソルをモデル計算により推定し、既存のエッジ強調手法の組み合わせにより、横ずれ断層の位置検出手法の開発を試みた。横ずれ断層運動が作る重力異常と重力偏差テンソルは、断層運動による重力変化の累積により形成されると仮定した。断層運動に伴う重力変化は、高さ変化による寄与と密度変化による寄与の2つがある。重力異常や重力偏差では、フリーエア補正により高さの効果は補正されているため、観測される重力異常や重力偏差は、断層運動による密度変化の累積と見做すことが出来る。この効果は、Okubo (1992)により定式化されており、我々は横ずれ運動による理論重力異常としてこの式を用いた重力異常値を用いた。重力偏差テンソル各成分は、Mickus and Hinojosa (2001)の方法により、重力異常値より推定された。
これらのデータを用いて横ずれ断層位置の検出試験を行った。その結果、TDXと水平一次微分を組み合わせると、横ずれ断層位置が特定されやすいということが分かった。
[謝辞]
この研究は科学研究費助成事業(課題番号:17K01325, 17K05629)によって行われました。記して感謝致します。
[文献]
Cooper, G. R. J., and Cowan, D. R. (2006): Enhancing potential field data using filters based on the local phase, Comp. Geosci., 32, 1585–1591.
Li, L., Huang, D., Han, L., and Ma, G. (2014): Optimized detection filters in the interpretation of potential field data. Expl. Geophys., 45, 171–176.
Ma, G. (2013): Edge detection of potential field data using improved local phase filter. Expl. Geophys., 44, 36–41.
Mickus, K. L., and Hinojosa, J. H. (2001): The complete gravity gradient tensor derived from the vertical component of gravity: a Fourier transform technique, Jour. Appl. Geophys., 46, 159-174.
Okubo, S. (1992): Gravity and potential changes due to shear and tensile faults in a half-space. J. Geophys. Res., 97, 7137–7144.
Zhang, X., Yu, P., Tang, R., Xiang, Y., and Zhao, C-J. (2014): Edge enhancement of potential field data using an enhanced tilt angle. Expl. Geophys., 46, 276–283.
地下に断層構造が存在するとき、重力異常は大きく変化するため、断層位置推定では重力探査がよく採用されてきた。この重力異常の空間的な変化を明確にするため、水平一次微分や鉛直一次微分がよく採用されてきた。断層構造のような構造急変部はエッジとよばれ、エッジを強調し、エッジの位置を明示する水平一次微分や鉛直一次微分はエッジ強調手法とよばれる。近年では、TDX, ILP, CLP, THVHといった、より感度の高いエッジ強調手法が研究、開発されてきている(例えば, Cooper and Cowan, 2006; Ma, 2013; Li et al., 2014; Zhang et al., 2014)。しかしながら、これらは、密度差をもつ構造境界の抽出を目的としているため、横ずれ断層の位置推定には不向きである。少なくとも単独での使用では、横ずれ断層の位置推定は難しい。
本研究では、まず、横ずれ断層運動が作る重力異常と重力偏差テンソルをモデル計算により推定し、既存のエッジ強調手法の組み合わせにより、横ずれ断層の位置検出手法の開発を試みた。横ずれ断層運動が作る重力異常と重力偏差テンソルは、断層運動による重力変化の累積により形成されると仮定した。断層運動に伴う重力変化は、高さ変化による寄与と密度変化による寄与の2つがある。重力異常や重力偏差では、フリーエア補正により高さの効果は補正されているため、観測される重力異常や重力偏差は、断層運動による密度変化の累積と見做すことが出来る。この効果は、Okubo (1992)により定式化されており、我々は横ずれ運動による理論重力異常としてこの式を用いた重力異常値を用いた。重力偏差テンソル各成分は、Mickus and Hinojosa (2001)の方法により、重力異常値より推定された。
これらのデータを用いて横ずれ断層位置の検出試験を行った。その結果、TDXと水平一次微分を組み合わせると、横ずれ断層位置が特定されやすいということが分かった。
[謝辞]
この研究は科学研究費助成事業(課題番号:17K01325, 17K05629)によって行われました。記して感謝致します。
[文献]
Cooper, G. R. J., and Cowan, D. R. (2006): Enhancing potential field data using filters based on the local phase, Comp. Geosci., 32, 1585–1591.
Li, L., Huang, D., Han, L., and Ma, G. (2014): Optimized detection filters in the interpretation of potential field data. Expl. Geophys., 45, 171–176.
Ma, G. (2013): Edge detection of potential field data using improved local phase filter. Expl. Geophys., 44, 36–41.
Mickus, K. L., and Hinojosa, J. H. (2001): The complete gravity gradient tensor derived from the vertical component of gravity: a Fourier transform technique, Jour. Appl. Geophys., 46, 159-174.
Okubo, S. (1992): Gravity and potential changes due to shear and tensile faults in a half-space. J. Geophys. Res., 97, 7137–7144.
Zhang, X., Yu, P., Tang, R., Xiang, Y., and Zhao, C-J. (2014): Edge enhancement of potential field data using an enhanced tilt angle. Expl. Geophys., 46, 276–283.