[MTT38-P05] 火星探査における複数の小型ローバーを用いた音源探査手法の開発
キーワード:音源探査、火星、複数の小型ローバー、インフラサウンド
はじめに
従来の火星探査において小型のローバーや複数機の同時投入などは行われていない。また火星大気中での音の観測に関しても前例が無い。
こうしたことを踏まえて、本研究では将来の惑星探査、特に火星地表面における親機および子機から成る複数の小型惑星探査ローバー群による音源探査手法を開発し、有用性を確認することを目的とする。
音源探査法
複数の子機ローバーはマイクを搭載し音源探査を行い、親機(ランダーまたはローバー)は子機による探査情報の収集・処理、各子機の位置把握、地球またはリレー衛星等との通信の役割を担う。探査手法の構想としては以下の通りである。まず火星に着陸後、親機を中心に子機3機で正三角形を形成する。子機3台で正三角形をなすのは、系全体の音の指向性を無くし、どの方向から到来した音に対しても対処できるようにするためである。音源探査において低周波音を用いようと考えているため、各子機の距離として30 m~50 m程度を考えている。低周波音は高周波音に比べ、減衰しにくく長距離伝搬する特性を持っており、この.各子機ローバーの距離が30 m~50 mの時、二酸化炭素主成分の火星大気中での音速を仮に約231[m/s]とした場合、4.62 Hz~7.7 Hzの低周波までカバー出来る。こうした低周波音、特に人間には聞こえない20 Hz以下の音はインフラサウンドと呼ばれる。インフラサウンドは火山噴火や雷など大気中の爆発的振動に起因する.そのため各子機の距離を上述の程度にすることで、火星におけるガスの放出や砂嵐(ダストデビル)の内部で起こっている可能性がある雷の観測、またそれらのイベントにより発生したインフラサウンドを利用しての音源探査が可能になる。
音源探査を行う場合,各子機で計測される音波波形に対する相互相関関数を用いて,音源位置推定を行う。マイク1で受信した信号f,マイク2で受信した信号gに関して、信号gをnサンプルずらした時の相互相関関数が最大となった場合、相関のある2つの信号f,gにはこの時のサンプル数分位相差があると言える。この位相差から各マイクへの音の到着時間差を求めることができる.音速が既知の場合,音の到着時間差から各マイクと音源との距離の差が分かる.このことから音源位置の候補は,マイク1の座標をF1(C,0),マイク2の座標をF2(-c,0)とした時,この2点を焦点とする双曲線として描ける.
この様に2台のマイクへの音の到着時間差から音源位置の候補を算出でき、これを平面上において3台以上のマイクでそれぞれ行い、各双曲線の交点を求めることで2次元平面上での音源位置推定が可能となる.
音源位置推定実験
高知工科大学において3台の市販ICレコーダー(OLYMPUS製 LS-P2)および、Raspberry Pi Zeroと高感度マイクアンプキット(株式会社秋月電子通商製 AE-MICAMP)による自作録音装置を用いた2つの実験を行った。それぞれの実験においてICレコーダーまたは自作録音装置を、正三角形をなすように配置し、任意の点より音を鳴らす。それぞれの録音波形に対し相互相関処理を行うことで、音の到着時間差と音源からの距離差を求めた。算出した音源からの距離差を用いて双曲線を作成し、音源位置の候補の軌跡を描く.
結果・考察
ICレコーダーを用いた音源位置推定の実験結果を図1に、自作録音装置による結果を図2にそれぞれ示す。観測点の間隔は約30 mである。図1の通りICレコーダーを用いた実験では音源位置は精度よく推定できた。しかし図2の通り、自作録音装置による音源位置の推定は解が求まらなかった。これは自作装置による実験時に風が強く外乱により相互相関処理結果に誤差が生じてしまったためと考えられる. 例えば風切り音を抑制するためのスポンジ状の覆いをマイクに被せる等、外乱による環境ノイズへの対処が足りず今回の結果になったと考える。
結論
自作の音源位置推定プログラムは、ノイズが無くイベントによる波形がクリアに確認できる場合には、正常に作動した。今後の課題として外乱ノイズに対する処理を最優先で行わなければならない.また音源位置推定後のローバーの自律行動などに関しても,より詳細に検討していく必要がある.ノイズ除去または低減により、何らかのイベントで発生した音のみを取得できるようになれば、高精度での音源位置推定が可能となってくる.またノイズ除去による自作録音装置での音源位置推定が可能となった場合、子機に搭載してローバーとして移動させる実験や親機の製作等、複数ローバーによる音源探査システムの開発を進めていく。
従来の火星探査において小型のローバーや複数機の同時投入などは行われていない。また火星大気中での音の観測に関しても前例が無い。
こうしたことを踏まえて、本研究では将来の惑星探査、特に火星地表面における親機および子機から成る複数の小型惑星探査ローバー群による音源探査手法を開発し、有用性を確認することを目的とする。
音源探査法
複数の子機ローバーはマイクを搭載し音源探査を行い、親機(ランダーまたはローバー)は子機による探査情報の収集・処理、各子機の位置把握、地球またはリレー衛星等との通信の役割を担う。探査手法の構想としては以下の通りである。まず火星に着陸後、親機を中心に子機3機で正三角形を形成する。子機3台で正三角形をなすのは、系全体の音の指向性を無くし、どの方向から到来した音に対しても対処できるようにするためである。音源探査において低周波音を用いようと考えているため、各子機の距離として30 m~50 m程度を考えている。低周波音は高周波音に比べ、減衰しにくく長距離伝搬する特性を持っており、この.各子機ローバーの距離が30 m~50 mの時、二酸化炭素主成分の火星大気中での音速を仮に約231[m/s]とした場合、4.62 Hz~7.7 Hzの低周波までカバー出来る。こうした低周波音、特に人間には聞こえない20 Hz以下の音はインフラサウンドと呼ばれる。インフラサウンドは火山噴火や雷など大気中の爆発的振動に起因する.そのため各子機の距離を上述の程度にすることで、火星におけるガスの放出や砂嵐(ダストデビル)の内部で起こっている可能性がある雷の観測、またそれらのイベントにより発生したインフラサウンドを利用しての音源探査が可能になる。
音源探査を行う場合,各子機で計測される音波波形に対する相互相関関数を用いて,音源位置推定を行う。マイク1で受信した信号f,マイク2で受信した信号gに関して、信号gをnサンプルずらした時の相互相関関数が最大となった場合、相関のある2つの信号f,gにはこの時のサンプル数分位相差があると言える。この位相差から各マイクへの音の到着時間差を求めることができる.音速が既知の場合,音の到着時間差から各マイクと音源との距離の差が分かる.このことから音源位置の候補は,マイク1の座標をF1(C,0),マイク2の座標をF2(-c,0)とした時,この2点を焦点とする双曲線として描ける.
この様に2台のマイクへの音の到着時間差から音源位置の候補を算出でき、これを平面上において3台以上のマイクでそれぞれ行い、各双曲線の交点を求めることで2次元平面上での音源位置推定が可能となる.
音源位置推定実験
高知工科大学において3台の市販ICレコーダー(OLYMPUS製 LS-P2)および、Raspberry Pi Zeroと高感度マイクアンプキット(株式会社秋月電子通商製 AE-MICAMP)による自作録音装置を用いた2つの実験を行った。それぞれの実験においてICレコーダーまたは自作録音装置を、正三角形をなすように配置し、任意の点より音を鳴らす。それぞれの録音波形に対し相互相関処理を行うことで、音の到着時間差と音源からの距離差を求めた。算出した音源からの距離差を用いて双曲線を作成し、音源位置の候補の軌跡を描く.
結果・考察
ICレコーダーを用いた音源位置推定の実験結果を図1に、自作録音装置による結果を図2にそれぞれ示す。観測点の間隔は約30 mである。図1の通りICレコーダーを用いた実験では音源位置は精度よく推定できた。しかし図2の通り、自作録音装置による音源位置の推定は解が求まらなかった。これは自作装置による実験時に風が強く外乱により相互相関処理結果に誤差が生じてしまったためと考えられる. 例えば風切り音を抑制するためのスポンジ状の覆いをマイクに被せる等、外乱による環境ノイズへの対処が足りず今回の結果になったと考える。
結論
自作の音源位置推定プログラムは、ノイズが無くイベントによる波形がクリアに確認できる場合には、正常に作動した。今後の課題として外乱ノイズに対する処理を最優先で行わなければならない.また音源位置推定後のローバーの自律行動などに関しても,より詳細に検討していく必要がある.ノイズ除去または低減により、何らかのイベントで発生した音のみを取得できるようになれば、高精度での音源位置推定が可能となってくる.またノイズ除去による自作録音装置での音源位置推定が可能となった場合、子機に搭載してローバーとして移動させる実験や親機の製作等、複数ローバーによる音源探査システムの開発を進めていく。