[O06-P04] 松浦武四郎の史料から検証する十勝岳の安政年代における火山活動
キーワード:十勝岳、松浦武四郎、郷土史、噴火、十勝岳ジオパーク構想
北海道中央部に位置する活火山の十勝岳は,20世紀に3回のマグマ噴火が発生しており,1926年の噴火では融雪型火山泥流が発生し,上富良野町と美瑛町で合わせて144名の死者を出す大災害となった.十勝岳における今後の火山活動を考える上で,20世紀以前のマグマ噴火の履歴を把握することは重要である.十勝岳ににおける有史最古の噴火は,松浦武四郎の紀行文である石狩日誌(1861年発行)の「山半腹にして火脈燃立て黒烟天を刺上るを見る」という記述から,1857年(安政4年)だと考えられてきた.しかしながら,十勝岳の地質調査において,1857年に相当する噴火堆積物は見つかっておらず,噴火が本当に起きたのか明らかではない.本研究では,1857年に十勝岳で噴火があった根拠とされてきた記述について,松浦武四郎の野帳などの史料から再検討を行った.
本研究では,松浦武四郎が現地で記述した一次史料である野帳や,二次史料である公式報告書の稿本、作成された地図などから,十勝岳に関連する記述・描写を抜き出した.その結果,現地での野帳において,十勝岳の噴気や硫黄に関する伝聞は記されているものの,十勝岳の火山活動を目撃したという実見記録がないことが分かった.一般向けに公刊され、様々な脚色がなされていることが明らかになっている石狩日誌にのみ,1857年の十勝岳の噴火に結びつけられる記述があることが明らかになった.以上のことから,十勝岳における1857年の噴火を目撃したという,石狩日誌の記述は創作的脚色である可能性が高いといえる.噴火の根拠となった記述が信用できず,地質学的にも噴火した証拠が見出せていないことから,十勝岳は1857年に噴火していない可能性が高いと考えられる.
本研究では,松浦武四郎が現地で記述した一次史料である野帳や,二次史料である公式報告書の稿本、作成された地図などから,十勝岳に関連する記述・描写を抜き出した.その結果,現地での野帳において,十勝岳の噴気や硫黄に関する伝聞は記されているものの,十勝岳の火山活動を目撃したという実見記録がないことが分かった.一般向けに公刊され、様々な脚色がなされていることが明らかになっている石狩日誌にのみ,1857年の十勝岳の噴火に結びつけられる記述があることが明らかになった.以上のことから,十勝岳における1857年の噴火を目撃したという,石狩日誌の記述は創作的脚色である可能性が高いといえる.噴火の根拠となった記述が信用できず,地質学的にも噴火した証拠が見出せていないことから,十勝岳は1857年に噴火していない可能性が高いと考えられる.