日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EE] Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] 太陽系小天体研究:現状の理解と将来の展望

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)、中本 泰史(東京工業大学)、荒川 政彦(神戸大学大学院理学研究科、共同)、安部 正真(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

[PPS03-P10] 「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ ー JAXAサンプルリターンミッション帰還試料キュレーションの現状と計画

*矢田 達1安部 正真1岡田 達明1坂本 佳奈子1吉武 美和1中埜 夕希1松本 徹1川崎 教行1熊谷 和也1西村 征洋2松井 重雄1圦本 尚義3,1藤本 正樹1,4 (1.宇宙航空研究開発機構、2.マリン・ワーク・ジャパン、3.北海道大学、4.東京工業大学)

キーワード:はやぶさ、はやぶさ2、キュレーション、小惑星、サンプルリターン

2010年に小惑星探査機はやぶさによってもたらされた小惑星イトカワ粒子のキュレーションはJAXA地球外物質研究グループ(ASRG)により地球外試料キュレーションセンター(ESCuC)において2018年現在も継続している[1]。これまでの所、600個近いイトカワレゴリス粒子を高純度窒素環境のクリーンチェンバー内で静電制御マイクロマニピュレーターにより拾い出してFE-SEM/EDSで大気に晒すことなく記載した。それらの粒子の電子顕微鏡像とEDSスペクトルはASRGのウェブサイト(https://hayabusaao.isas.jaxa.jp/curation/index.html)で公開されており、2012年から始まった国際公募研究(AO)を通じて世界中の研究者が研究できるようになっている。これまでの国際AOの結果、200個以上のイトカワ粒子が50以上の研究テーマに対して配布されている。我々は2020年までにはやぶさ帰還試料の一連の初期記載を終了する予定である。

一方、はやぶさ2は今年(2018年)目標小惑星リュウグウに到着し、一連のリモートセンシング観測や試料採集などを行い、2019年にリュウグウを離れ、2020年に採集した試料を地球に帰還させる予定である[2]。このはやぶさ2帰還試料のキュレーションの為に、ASRGでははやぶさ2帰還試料キュレーション設備仕様検討委員会との協力の下、はやぶさ帰還試料クリーンルームの隣に建設する新しい専用クリーンルームとその部屋に設置する専用クリーンチェンバーを開発した。はやぶさ2帰還試料用クリーンチェンバーは5つの部分(CC3-1、3-2、3-3、4-1、4-2)に分かれており、前半3つは真空環境での作業、後半2つは高純度窒素雰囲気での作業を行う為のものである。CC3-1でははやぶさ2のサンプル容器を開封してサンプルキャッチャーを取り出す作業を行う予定で、取り出されたキャッチャーはCC3-2に搬送される。CC3-2でキャッチャーの蓋が開けられ、試料の一部が真空下に於いて採集される。その後、キャッチャーはCC3-3に送られ、ここで真空環境から高純度窒素環境に置き換えられる。キャッチャーは更にCC4-1及び4-2に送られ、光学顕微鏡による観察、秤量などの初期記載が行われる。

クリーンルームの建設は昨年の夏に完了しており、クリーンチェンバーは今年の夏までにクリーンルーム内に設置される予定である。ASRGでは今年の秋からはやぶさ2サンプラーチーム及び初期分析チームとの協力の下、クリーンチェンバーの機能確認及びそれらを使用したリハーサルを行う予定になっている。一連のリハーサルが完了したら、クリーンチェンバーの機能・性能回復作業を行い、試料帰還に備える予定である。

2020年の終りにはやぶさ2は小惑星試料を載せた再突入カプセルをオーストラリアに帰還させる予定である。カプセルは速やかに着陸地点から回収され、着地点近くの施設に送られて、その中からサンプル容器を取り出し、その外面洗浄の上、ガス採集機構に取り付ける。そのガス採集機構によりコンテナ容器内のガスをガス採集ボンベに回収する。その後、それら全ては日本に持ち帰られ、ESCuCに持ち込まれる。そしてサンプルコンテナに対して上に述べた作業を実施する。試料帰還後の半年間の初期記載の後、試料の一部は初期分析チーム及びJAXAと協力関係にある分析機関へ配布される。試料帰還の1年後、JAXA-NASA間の取り決め文書(MOU)に基づき、NASAへの試料配付が実施される。そして、試料帰還の1年半後、はやぶさ2帰還試料は世界の研究者に対して配布可能となる。

参考文献:[1] Yada T. et al. (2014), Meteorit. Planet. Sci. 49, 135. [2] Watanabe S. et al. (2017) Space Sci. Rev. 208, 3.