日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS05] 月の科学と探査

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:長岡 央(早稲田大学理工学術院総合研究所)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、西野 真木(名古屋大学宇宙地球環境研究所、共同)、鹿山 雅裕(東北大学大学院理学研究科地学専攻)

[PPS05-P08] 月表面物質の遠隔探査に向けた二次イオン観測

*加藤 大羽1斎藤 義文2横田 勝一郎3西野 真木4 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、3.大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻、4.名古屋大学宇宙地球環境研究所)

キーワード:月、二次イオン、質量分析、磁気異常、かぐや

月は地球磁気圏の外側に存在するとき、常に太陽風に曝されている。月には全球的な固有磁場も十分な大気も存在しないために、月昼側のほとんどの領域で太陽風が直接月表面に衝突する。太陽風イオンや太陽光が月表面に衝突すると、数eV程度のエネルギーを持つ二次イオンが放出される。放出された二次イオンは、太陽風中の電場によって数100eV程度まで加速されながら上昇し、月上空を周回する探査衛星で観測できる。この二次イオンの組成は、生成された場所の月固体表面の元素組成と対応していることから、将来的に二次イオン観測による月表面物質の遠隔探査を行うことが期待されている。しかしながら、具体的に二次イオンをイオン種毎に定量的に観測し、月表面の生成場所を特定する研究は行われていない。
月探査衛星「かぐや」に搭載されたイオン観測装置MAP-PACE-IMAは、月周辺で初めて月起源の二次イオンの観測を行い質量分析することに成功した。本発表では、このIMAの観測データを用いて月起源の二次イオンをイオン種(H+, He++, 3He+, 4He+, C+, N+, O+, Na+, Mg+, Al+, Si+, P+, S+, Ar+, K+, Ti+, Cr+, Mn+, Fe+, Zn+の20種)毎に解析し、太陽風電場のベクトルから月表面の生成場所の特定を行った。
月起源イオンの生成過程はいくつか存在し、特に太陽光による光脱離や中性大気の電離、太陽風イオンによるスパッタリング生成が支配的なメカニズムである。太陽光による月起源イオンの生成は、主にNa+やK+といったアルカリイオンが放出される。これに対し、太陽風イオンによるスパッタリング生成では、月固体表面の組成に応じた様々なイオン種が放出される。また、月に局所的に存在する磁気異常領域では、太陽光は月面衝突するが太陽風イオンは磁場により上空で反射される。そこで月起源イオンの生成場所について磁気異常の有無で比較することで、生成過程毎にそれぞれ放出される二次イオンの割合を求めた。それに加え、作成したイオン種毎の月起源イオン生成分布と月固体表面の元素組成分布を比較した。その結果、月周辺の二次イオン観測は月固体表面組成を直接再現はしないが、磁気異常の存在やイオン生成過程の違いを考慮することで、遠隔探査による月表面物質の情報を得ることが可能であることが分かった。この結果は、月だけでなく様々な小型天体に応用することが期待できる。