[PPS06-P06] 八王子隕石の希ガス・岩石学的研究と分類
キーワード:隕石、普通コンドライト
八王子隕石は1817年12月29日に、大きさ1m程度の破片を含む隕石シャワーとして、東京西部に約10kmの範囲に落下した。回収された破片の一部は江戸幕府勘定奉行所に届けられたが、現在までにそれらはすべて散逸した。1950年代に京都の土御門家の古典籍の中から小片(~0.1g)が見つかった。八王子隕石について書かれた紙の中に挟まれていたことから、八王子隕石の一つであると考えられていた。しかし、同じ包みの中に曽根隕石(1866年に落下)について記載された紙も入っていた。よって、この小片が曽根隕石の可能性も否定できない。本研究では、この八王子隕石の小片の岩石学的研究と希ガス分析を行った。小片から20 mgほどの破片を割取り樹脂に包埋し研磨厚片と薄片を作成した。光学顕微鏡および走査電子顕微鏡で組織観察を行い、X線プローブマイクロアナライザで鉱物組成の定量を行った。さらに、0.7 mgの粉末をX線回折装置で分析を行い、5.4mgの粉末の希ガス分析を行った。曽根隕石の小片に対しても同じ分析を行った。八王子と曽根隕石の薄片には、数個のコンドルールが観察され、マトリックスは再結晶組織を示す。衝撃変成度はS1である。かんらん石および輝石の組成は均質で二つの隕石の間に有意な差異が見られなかった(八王子: Fa18.0-20.1, Fs15.5-17.3; 曽根: Fa17.9-19.6, Fs15.8-17.8)。この結果、八王子隕石は、曽根隕石と同様、普通コンドライトの一種であるH5コンドライトに分類される。八王子隕石の宇宙線照射年代は19.3±2.9 Maで、K-Ar年代は4.49±0.41 Gaである。岩石学的あるいは希ガス組成も、二つの隕石に差異は認められなかった。以上の結果から、八王子隕石の小片が、曽根隕石である可能性が高い。しかし、H5コンドライトは非常に多い種類の隕石(全隕石個数の約20%)であるため、八王子隕石と曽根隕石が別々の落下であるにもかかわらず、同種の隕石であった可能性も否定できない。