[PPS09-P01] 炭化水素と純炭素分子による星間赤外スペクトルの解析
キーワード:星間ダスト、赤外スペクトル、PAH
星間赤外スペクトル(IR)には多環芳香族炭化水素(PAH)に関連する発光波長がみられる。ところがこれまで特定の分子は同定されていない。そこで、最近の天文知見をもとに、(1)星間では中心星から飛来した高速プロトン粒子がPAH分子に衝突して空孔が生じ、さらに(2)高エネルギーフォトンにより光イオン化が起きると仮定し、量子化学計算による分子同定を行った。
結果1、炭化水素 5員環・6員環結合分子
当初のモデル分子をコロネン(C24H12)[6員環7個]とした。プロトンなどの高速粒子の衝突により分子内部の炭素が一個ぬけて空孔が生じる。ただちに量子化学的再結合がおき、5員環2個と6員環5個で構成されて(C23H12)分子となった。高エネルギー光により電子がはじきとばされて陽イオンとなる。価数がゼロから+4の分子群のIR計算を行い、結果を実測と比較したところ、2価の陽イオン (C23H12)2+ の場合に観測例(UsualIR、代表天体はNGC7023,NGC2023など)を下記のように再現できた(1)。
観測波長(ミクロン)3.3、6.2、7.7、8.6、11.2、12.7
計算波長(ミクロン)3.2、6.3、7.7、8.6、11.2、12.7
結果2、純炭素分子
上記の結果1を手本とし、最近観測されたUnusual IRとよばれる例の解析を進めた。代表的天体はNGC1316, NGC4589などであり、従来の短波長側のピークが明瞭には見られない(2)。短波長の分子振動は主にC-H間の伸縮やベンディングによるものと考えられるので、水素が付いていないと考えるのが自然である。そこで(C23H12)から水素を脱離した純炭素分子(C23)[5員環2個+6員環5個]をモデルとして IR計算を行った。結果は2価の陽イオン純炭素分子(C23)2+ で、観測値をよく再現できるものとなった(3)。
観測波長(ミクロン)11.3、12.8、14.0、15.6、17.2、19.0
計算波長(ミクロン)11.3、13.0、14.0、15.6、17.0、19.0
以上の炭化水素分子と純炭素分子がさまざまな比率でダスト中に共存すると仮定すると、多数の天体のスペクトル強度のバラエティを合理的に説明できることも分かった。本研究により、特定の分子の同定と環状分子の進化モデルを示唆できたと考えている。
参考文献
(1)Norio Ota, arXiv.org 1703.05931 (2017)
(2)B. Asabere et al, arXiv.org 1605.07651 (2016)
(3)Norio Ota, arXiv.org 1708.08043 (2017)
結果1、炭化水素 5員環・6員環結合分子
当初のモデル分子をコロネン(C24H12)[6員環7個]とした。プロトンなどの高速粒子の衝突により分子内部の炭素が一個ぬけて空孔が生じる。ただちに量子化学的再結合がおき、5員環2個と6員環5個で構成されて(C23H12)分子となった。高エネルギー光により電子がはじきとばされて陽イオンとなる。価数がゼロから+4の分子群のIR計算を行い、結果を実測と比較したところ、2価の陽イオン (C23H12)2+ の場合に観測例(UsualIR、代表天体はNGC7023,NGC2023など)を下記のように再現できた(1)。
観測波長(ミクロン)3.3、6.2、7.7、8.6、11.2、12.7
計算波長(ミクロン)3.2、6.3、7.7、8.6、11.2、12.7
結果2、純炭素分子
上記の結果1を手本とし、最近観測されたUnusual IRとよばれる例の解析を進めた。代表的天体はNGC1316, NGC4589などであり、従来の短波長側のピークが明瞭には見られない(2)。短波長の分子振動は主にC-H間の伸縮やベンディングによるものと考えられるので、水素が付いていないと考えるのが自然である。そこで(C23H12)から水素を脱離した純炭素分子(C23)[5員環2個+6員環5個]をモデルとして IR計算を行った。結果は2価の陽イオン純炭素分子(C23)2+ で、観測値をよく再現できるものとなった(3)。
観測波長(ミクロン)11.3、12.8、14.0、15.6、17.2、19.0
計算波長(ミクロン)11.3、13.0、14.0、15.6、17.0、19.0
以上の炭化水素分子と純炭素分子がさまざまな比率でダスト中に共存すると仮定すると、多数の天体のスペクトル強度のバラエティを合理的に説明できることも分かった。本研究により、特定の分子の同定と環状分子の進化モデルを示唆できたと考えている。
参考文献
(1)Norio Ota, arXiv.org 1703.05931 (2017)
(2)B. Asabere et al, arXiv.org 1605.07651 (2016)
(3)Norio Ota, arXiv.org 1708.08043 (2017)