[SCG57-P06] 斜長石の高温細粒化と組成累帯構造
キーワード:斜長石、細粒化、離溶、相分離、下部地殻
内陸地震の発生過程は十分に解明されておらず,下部地殻における局所的な弱い部分(剪断帯)の発達が内陸地震を発生させるというモデルが近年注目されている.このモデルを検証するためには,下部地殻の主要な構成鉱物である斜長石の変形特性(レオロジー特性)の解明が重要である.斜長石は十分に細粒であるときには粒径依存クリープで変形し,細粒化する前より柔らかくなる(軟化する).下部地殻条件における,斜長石の細粒化過程には主に,動的再結晶,破砕,変成再結晶,相転移がこれまで報告されているが,斜長石の新たな細粒化過程として離溶・相分離が近年提案された.本研究では,ノルウェー北部の Eidsfjord 剪断帯の斜長岩マイロナイトを用いて,下部地殻条件における斜長石の細粒化過程の解明を目的とし,斜長石の細粒化過程における離溶・相分離の効果・影響について特に詳しく検討した.変形微細組織や SEM-EBSD を用いた結晶方位解析からは,斜長石の細粒化過程として動的再結晶や破砕は重要ではないことが明らかとなった.また,組成累帯構造を呈する細粒斜長石において,Na に富む斜長石中心部と Ca に富む斜長石縁辺部の組成の範囲にギャップが存在すること,および Na に富む斜長石中心部の組成と斜長石ポーフィロクラストの組成が類似していることから,少なくとも細粒斜長石の組成累帯構造は斜長石ポーフィロクラストの破砕粒子を核(Naに富む部分)として Ca に富む部分がその周囲に成長したとは考えられず,細粒斜長石の組成累帯構造が離溶・相分離による細粒化の結果である可能性が示唆された.