[SCG57-P10] 東北地方脊梁中央部におけるVp/Vs構造と浅部地震活動の関係
キーワード:不均質構造、地震活動
内陸地震の発生には,上部地殻の不均質構造が大きな影響を与えていると考えられる.地殻内の構造的不均質構造に起因する応力と強度の不均質性と地震発生の関係を詳細に明らかにすることができれば,地震の発生しやすい領域や,その領域において発生しやすい地震の断層タイプなどの予測に繋がる.そこで,本研究では,地震活動が活発な東北地方脊梁中央部において,微小・小地震の詳細な解析を行い,地震活動と応力と強度の不均質性の関係について議論する.
東北地方脊梁中央部において,2008年岩手・宮城内陸地震の余震分布とその断層タイプを詳細に検討した.余震分布は西傾斜の面と東傾斜の面を構成しているように見えるため,既往研究では共役な断層が滑ったものと考えられていた.本震の発生した西傾斜の震源分布では本震と同じ東西圧縮の逆断層型の地震が卓越しており,これらは本震の断層面を反映していると考えられる.しかしながら,対になっている東傾斜の震源分布を構成する地震には,南北圧縮の逆断層型地震が数多く含まれていることが判明した.2008年岩手・宮城内陸地震のような東西圧縮の逆断層型の地震が発生した場合,その断層の東と西では南北圧縮の応力場が生じうる (Yoshida et al., 2014).しかし,応力場を検討した結果,南北圧縮の余震が生じた場所と同程度の差応力が生じているにも関わらず,南北圧縮の余震が生じていない場所が存在していることが分かった.このような違いが,例えば,間隙圧の違いに起因する強度の不均質性を反映しているのならば,Vp/Vs比に違いが生じることが期待される.そこで,余震域においてLin and Shearer (2007)の手法を用いて,波形相関を利用したP波とS波の高精度の地震間到達時刻差データから,Vp/Vs比の推定を行なった.
その結果,岩手・宮城内陸地震の余震分布域の広い範囲に渡って,Vp/Vs比が1.50~1.70といった低い値を示すことが判明した.この推定されたVp/Vs比の結果から,上部地殻の地震発生域では,1.70を下回るVp/Vs比が卓越している可能性が高く,また場所によっては1 km程度の空間スケールでVp/Vs比が0.1以上揺らいでいることが判明した.さらに,既往研究のトモグラフィの結果(Okada et al., 2012)とあわせて,東傾斜の震源分布を構成する南北圧縮の逆断層型の地震の分布とVp/Vs比と本震発生後の応力場を詳細に検討した結果,東傾斜の震源分布を示す南北圧縮型の余震は,本震の断層運動によって生じる差応力変化が8 MPa 以上で,Vp/Vsが1.70を超える領域で発生していた.つまり,東傾斜の余震分布は強度の低い領域の存在を示している可能性が高いことがわかった.
東北地方脊梁中央部において,2008年岩手・宮城内陸地震の余震分布とその断層タイプを詳細に検討した.余震分布は西傾斜の面と東傾斜の面を構成しているように見えるため,既往研究では共役な断層が滑ったものと考えられていた.本震の発生した西傾斜の震源分布では本震と同じ東西圧縮の逆断層型の地震が卓越しており,これらは本震の断層面を反映していると考えられる.しかしながら,対になっている東傾斜の震源分布を構成する地震には,南北圧縮の逆断層型地震が数多く含まれていることが判明した.2008年岩手・宮城内陸地震のような東西圧縮の逆断層型の地震が発生した場合,その断層の東と西では南北圧縮の応力場が生じうる (Yoshida et al., 2014).しかし,応力場を検討した結果,南北圧縮の余震が生じた場所と同程度の差応力が生じているにも関わらず,南北圧縮の余震が生じていない場所が存在していることが分かった.このような違いが,例えば,間隙圧の違いに起因する強度の不均質性を反映しているのならば,Vp/Vs比に違いが生じることが期待される.そこで,余震域においてLin and Shearer (2007)の手法を用いて,波形相関を利用したP波とS波の高精度の地震間到達時刻差データから,Vp/Vs比の推定を行なった.
その結果,岩手・宮城内陸地震の余震分布域の広い範囲に渡って,Vp/Vs比が1.50~1.70といった低い値を示すことが判明した.この推定されたVp/Vs比の結果から,上部地殻の地震発生域では,1.70を下回るVp/Vs比が卓越している可能性が高く,また場所によっては1 km程度の空間スケールでVp/Vs比が0.1以上揺らいでいることが判明した.さらに,既往研究のトモグラフィの結果(Okada et al., 2012)とあわせて,東傾斜の震源分布を構成する南北圧縮の逆断層型の地震の分布とVp/Vs比と本震発生後の応力場を詳細に検討した結果,東傾斜の震源分布を示す南北圧縮型の余震は,本震の断層運動によって生じる差応力変化が8 MPa 以上で,Vp/Vsが1.70を超える領域で発生していた.つまり,東傾斜の余震分布は強度の低い領域の存在を示している可能性が高いことがわかった.