日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG57] 変動帯ダイナミクス

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、竹下 徹(北海道大学大学院理学院自然史科学専攻)、岩森 光(海洋研究開発機構・地球内部物質循環研究分野)

[SCG57-P23] 運動学的震源インヴァージョンに基づく2016年鳥取県中部地震の動的断層モデルの構築

*佐藤 圭介1吉岡 祥一2,1青地 秀雄3,4 (1.神戸大学大学院 理学研究科、2.神戸大学 都市安全研究センター、3.パリ高等師範学校 地質学教室、4.フランス地質調査所)

本研究では,2016年10月21日に鳥取県中部で発生した鳥取県中部地震(Mw6.2)について,既往の運動学的インヴァージョン結果に基づいて動的断層モデルを構築した.本研究では,小林 他(2016)による,観測された地震波形の運動学的インヴァージョンによって得られたすべり量分布とその時間変化を用いて,せん断応力の時間変化を求めた.計算には境界積分方程式(Fukuyama and Madariaga, 1995; 1998)を用いた.すべり速度は小林他(2016)によって得られたすべり量の時間変化から時間微分することによって得た.なお、動的破壊のフォワード計算を行うために,時空間の刻みを, 1.0 sから0.022 sに, 1.5 kmから0.25 kmにそれぞれ補間して計算した.また,全国一次元地下構造モデル(地震調査研究推進本部,2012)を参考に,P波速度を5.75 km/s,剛性率を31.2 GPa とした.計算の結果,各要素においてすべり量の時間変化とせん断応力の時間変化が得られ、この関係から,各要素においてすべり量とせん断応力の関係が得られた.この関係から,臨界すべり弱化距離と応力降下量を求めた.本計算の結果,臨界すべり弱化距離は最大で1.3 m,応力降下量は-10~26 MPaとなった.得られた臨界すべり弱化距離の値は動的破壊のフォワード計算に用いるには大きく,これはインヴァージョンに用いられるすべり時間関数の解像度が十分でないことを示唆している.
このようにして得られた応力降下量の空間分布を用いて,動的破壊計算と地震波動場の計算を行うことにより,観測波形を満足するような破壊強度と臨界すべり弱化距離の値を求めた. 動的破壊計算には境界積分方程式法(Aochi et al., 2000)を,地震波動場の計算には差分法(Aochi and Madariaga, 2003)をそれぞれ用いた.初期破壊核は半径1.0 kmの円とし,断層のサイズ,物性値,時空間刻みの値は,すべり量の時間変化からせん断応力の時間変化を求める際と同じ値を用いた.上で得られた応力降下量の分布を初期応力分布とし,破壊強度と残留応力の値は断層面上で一定とした.臨界すべり弱化距離の値は,破壊開始点が最も小さく,それ以外の部分は破壊開始点からの距離に比例して大きくなるように設定した.残留応力は0 MPaとした.破壊強度の値を10~20 MPaの間で,臨界すべり弱化距離の値(最小値)を0.10~0.20 mの間でそれぞれ変化させ,観測波形と最も調和的になるような値を試行錯誤的に求めた.その結果,破壊強度は14 MPa,臨界すべり弱化距離は0.12 mと求まった.計算によって得られた波形と観測波形を比較すると,断層の南に位置する観測点ではおおむね振幅が等しくなっているが,断層の北に位置する観測点では計算波形の振幅は観測波形のそれよりも小さくなっていることがわかった.このことは,インヴァージョン結果に見られる断層中央のすべり域の他に,断層北側でもすべりが生じていることを示唆していると考えられる.