日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[EJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG59] 日本列島の構造と進化: 島弧の形成から巨大地震サイクルまで

2018年5月22日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、篠原 雅尚(東京大学地震研究所)、石川 正弘(横浜国立大学大学院環境情報研究院、共同)、松原 誠(防災科学技術研究所)

[SCG59-P03] 中部日本三河大野地域の中央構造線両側に産する年代未詳先新生代砂岩の比較ジルコン年代学:低角度MTLの活動時期

*長谷川 遼1磯崎 行雄1大友 幸子2堤 之恭3 (1.東京大学大学院総合文化研究科、2.山形大学地域教育文化学部、3.国立科学博物館)

キーワード:中央構造線、ジルコン、ウラン-鉛年代、白亜紀、砂岩、前弧地殻

西南日本中軸帯に産する白亜紀の領家花崗岩帯と三波川高圧変成帯との境界は、関東山地北縁から九州東部まで約1000 km連続する明瞭な断層、中央構造線(Median Tectonic Line; 以下MTL)で画される。MTLは本質的に地表から地殻底部にまで達する北傾斜の低角度断層であることが、21世紀になって地震学的探査により実証されたが、その低角度MTL断層の起源および正確な活動時期は未解明である。愛知県東部、三河大野地域には初期MTL(古MTL)がもつ低角度の三次元形態がよく保存されている。同地域の低角度MTLの両側に近接して、年代決定に有効な化石を産しない先新生代弱変成砕屑岩類が、領家帯のマイロナイトおよび三波川帯の緑色片岩に伴って薄い地質体として産する。本研究では、低角度MTLの活動時期を制限するため、同地域の、蓬莱峡/朝霧湖南方の七郷一色から巣山地域に断層を介してはさまれる”七郷一色層”の砂岩および領家の火砕岩類を不整合で覆う阿寺七滝礫岩の砂岩基質を採取し、その中から砕屑性ジルコンを抽出し、LA-ICPMSによるU-Pb年代測定を行った。その結果、年代未詳の弱変成砕屑岩類は、互いに異なる分布、岩相、そしてジルコン年代スペクトルをもつ二種の白亜系、すなわち領家帯南縁の七郷一色層および阿寺七滝礫岩と、三波川帯北縁の六田沢層(新称)に明瞭に区分されることが明らかになった。七郷一色層の砂岩と阿寺七滝礫岩の砂岩基質は後期白亜紀粒子が卓越する共通のジルコン年代スペクトルを持ち、最若年代粒子からそれらの堆積年代は白亜紀末マーストリヒチアンあるいはそれ以降であることが判明した。年代スペクトルの類似性から、ともに四国・紀伊半島の和泉層群に対比される。一方、三波川帯北縁に産する六田沢層の砂岩は、ペルム紀とジュラ紀粒子に富み、かつ先カンブリア時代の粒子を伴うが、白亜紀の粒子は含まない。堆積年代はおそらく前期白亜紀と推定され、年代スペクトルの類似性から関東山地北縁の跡倉/栃谷層および四国西部の真穴層に対比される。低角度MTLの上盤側に和泉層群に対比される最上部白亜系砂岩が、一方で下盤側に跡倉層に対比される下部白亜系砂岩が産することが明らかになった。三河大野地域の低角度MTLの活動について、次の年代制限が得られた。すなわち、低角度断層の活動は(1)上盤(領家帯)の最上部白亜系の堆積(白亜紀末マーストリヒチアンないしそれ以降)およびその後の変形の後、(2)下盤(三波川帯)の三波川変成岩上への下部白亜系の定置の後(始新世以降)、そして(3)中新世の設楽層群堆積の前である。従って、低角度MTLの活動開始は漸新世と推定される。