[SCG60-P02] レーザー誘起ブレークダウン分光法を用いた表層土中の粘土の分析
キーワード:レーザー誘起ブレークダウン分光法
[緒言]
レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)は、試料表面にレーザーを照射することで発生するマイクロプラズマを用いて元素の定性および定量を行う手法である。本法により、大気雰囲気下で水素やカリウム等の軽元素および重元素の多元素同時分析が可能である。法科学分野では、微量な試料に対してもほとんど前処理を行わずに分析可能で、簡便かつ迅速な分析法として注目されている。
本研究では、法地質学的試料の検査において、吸引ろ過移転法によって作製した薄膜状の粘土のLIBSによる分析法の開発を目的として、まず、分析条件の検討を行った。分析時には、試料を支持するガラス板までアブレートしてしまうことによる汚染を避けるために、適切なレーザー照射条件を定める必要がある。また、作製した薄膜試料の均質性を検証するために、得られた分析結果について、主成分分析による解析を実施した。
[試料と方法]
国内で採取された農耕地および住宅地の表層土ならびに福岡県能古島で採取された下層土から基層の土を、有機物分解後に目の開き53 µmの篩で湿式篩別を行い、目を通った粘土を試料とした。次いで、メーラ-ジャクソン法による脱鉄処理を実施し、40 mgの試料を吸引ろ過によってセルロース混合エステルメンブレンフィルター(メルクミリポア製、孔径0.45 µm)上に捕集後、ガラス板上に転写し、風乾した試料を分析した。
分析にはApplied Spectra Inc.製の装置J200LIBSを用いた。レーザーはNd:YAGレーザー(波長266 nm)、検出器はマルチチャンネルCCD検出器を用い、出力60 %、周波数は10 Hz、検出範囲は185-1048 nmとして分析を行った。まず、スポット分析によりレーザー照射径を30-200 µmで、ゲートディレイを0.25-1 µsecの範囲で実験後、試料毎に異なる3ラインについて分析を行った。ライン分析時には、走査速度の条件も検討した。
データ解析は、同社製のデータ解析ソフトAuroraにより主成分分析を行った。解析には、レーザー由来の波長266 nm(±0.2 nm)を除き、1ラインあたり計20点のデータを積算した結果を対象とした。
[結果および考察]
LIBSによる分析条件の検討の結果、レーザー照射径100 µm、ゲートディレイ1 µsec、走査速度1 mm/sで下部のガラス板を傷つけずに試料のみを分析することが可能であった。主成分分析の結果、同じ試料の分析点はバラツキが小さく、ライン分析において薄膜試料の均質性が示唆された。本法では、X線回折に用いた定方位標本による元素分析が可能となり、フィルター上に捕集した微量な土や河川、湖沼等の懸濁物質の分析にも応用可能であると考えられる。今後は、異なる地質背景をもつ表層土試料について分析を行い、識別能力の検討を行う。
レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS)は、試料表面にレーザーを照射することで発生するマイクロプラズマを用いて元素の定性および定量を行う手法である。本法により、大気雰囲気下で水素やカリウム等の軽元素および重元素の多元素同時分析が可能である。法科学分野では、微量な試料に対してもほとんど前処理を行わずに分析可能で、簡便かつ迅速な分析法として注目されている。
本研究では、法地質学的試料の検査において、吸引ろ過移転法によって作製した薄膜状の粘土のLIBSによる分析法の開発を目的として、まず、分析条件の検討を行った。分析時には、試料を支持するガラス板までアブレートしてしまうことによる汚染を避けるために、適切なレーザー照射条件を定める必要がある。また、作製した薄膜試料の均質性を検証するために、得られた分析結果について、主成分分析による解析を実施した。
[試料と方法]
国内で採取された農耕地および住宅地の表層土ならびに福岡県能古島で採取された下層土から基層の土を、有機物分解後に目の開き53 µmの篩で湿式篩別を行い、目を通った粘土を試料とした。次いで、メーラ-ジャクソン法による脱鉄処理を実施し、40 mgの試料を吸引ろ過によってセルロース混合エステルメンブレンフィルター(メルクミリポア製、孔径0.45 µm)上に捕集後、ガラス板上に転写し、風乾した試料を分析した。
分析にはApplied Spectra Inc.製の装置J200LIBSを用いた。レーザーはNd:YAGレーザー(波長266 nm)、検出器はマルチチャンネルCCD検出器を用い、出力60 %、周波数は10 Hz、検出範囲は185-1048 nmとして分析を行った。まず、スポット分析によりレーザー照射径を30-200 µmで、ゲートディレイを0.25-1 µsecの範囲で実験後、試料毎に異なる3ラインについて分析を行った。ライン分析時には、走査速度の条件も検討した。
データ解析は、同社製のデータ解析ソフトAuroraにより主成分分析を行った。解析には、レーザー由来の波長266 nm(±0.2 nm)を除き、1ラインあたり計20点のデータを積算した結果を対象とした。
[結果および考察]
LIBSによる分析条件の検討の結果、レーザー照射径100 µm、ゲートディレイ1 µsec、走査速度1 mm/sで下部のガラス板を傷つけずに試料のみを分析することが可能であった。主成分分析の結果、同じ試料の分析点はバラツキが小さく、ライン分析において薄膜試料の均質性が示唆された。本法では、X線回折に用いた定方位標本による元素分析が可能となり、フィルター上に捕集した微量な土や河川、湖沼等の懸濁物質の分析にも応用可能であると考えられる。今後は、異なる地質背景をもつ表層土試料について分析を行い、識別能力の検討を行う。