日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 岩石・鉱物・資源

2018年5月23日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:門馬 綱一(独立行政法人国立科学博物館)、野崎 達生(海洋研究開発機構海底資源研究開発センター)、齊藤 哲(愛媛大学大学院理工学研究科、共同)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

[SCG60-P06] 南インド・トリバンドラム岩体に産する超高温泥質グラニュライトのジルコンU–Pb年代と希土類元素パターンからみた変成温度–圧力–時間経路

*門脇 ひかる1角替 敏昭1M Santosh2高村 悠介1堤 之恭3 (1.筑波大学大学院生命環境科学研究科、2.中国地質大学地球科学・資源学科、3.国立科学博物館)

キーワード:南インド、トリバンドラム岩体、コンダライト、超高温変成作用、U–Pb年代、温度-圧力-時間経路

南インドグラニュライト地塊は、太古代~新原生代の様々な微小大陸や火山弧が複雑な沈み込み–付加–衝突の過程により形成されたものである。トリバンドラム岩体はインドの南端に位置し、主要な構成岩相はグラニュライト相の変成作用を受けた変堆積岩(コンダライトとレプチナイト)と正片麻岩(チャノッカイト、黒雲母片麻岩、苦鉄質グラニュライト)である。この地域の先行研究は多く、岩体内部でのピークの変成条件が異なることが指摘されている。そこで、本研究ではトリバンドラム岩体西部のElavinmooduから採集したコンダライトの鉱物組み合わせおよび化学組成、変成温度圧力条件、ジルコンのU–Pb年代データおよび希土類元素パターンをもとに、累進・ピーク・後退変成作用の温度圧力条件を推定し、当該地域の温度–圧力–時間経路を決定することで、この岩体の詳細なテクトニクスを解明することを目的とした。
 調査地域の主要な岩相はレプチナイト(斜長石+カリ長石+石英+ざくろ石+黒雲母+チタン鉄鉱+磁鉄鉱)とコンダイライトである。コンダライト中に見られる累進・ピーク・後退変成作用時の鉱物組み合わせはそれぞれ、石英+ざくろ石+斜長石+カリ長石+チタン鉄鉱+珪線石+スピネル(ざくろ石の包有物として産出)、黒雲母+石英+ざくろ石+斜長石+カリ長石+チタン鉄鉱+珪線石(マトリックス中に産出)、石英+ざくろ石+斜長石+カリ長石+チタン鉄鉱+磁鉄鉱+菫青石(溶融組織として産出)である。コンダライト中のメソパーサイトから得られたピーク変成作用時の温度は8 kbarにおいて1000–1100 °Cであり、超高温変成作用を示唆する。NCKFMASHTO系の鉱物平衡モデリングを用いた温度圧力条件の推定でもピーク変成作用時の温度圧力条件として920–1020 °C、6.9–7.5 kbarが得られ、こちらも超高温変成作用を示唆する。累進・後退変成作用時の温度圧力条件としてはそれぞれ約750 °C/7 kbarと約800 °C/4 kbarが得られた。累進・ピーク・後退変成作用時の条件から、時計回りの温度–圧力経路が推定される。
 ジルコンのU–Pb年代・希土類分析データ、温度圧力条件から、コンダライトの温度–圧力–時間経路を推定した。重希土類に乏しいジルコンから580 Maが得られ、これは累進変成作用時の部分溶融とメルトの再結晶によりざくろ石と共に810 °C以上で成長したと考えられる。比較的重希土類に富むジルコンからは530 Maが得られ、後退変成作用中の部分溶融によるざくろ石の分解によるものと考えられる。また、希土類に富むジルコンからは490 Maが得られ、流体の侵入とざくろ石の加水分解の影響でこのジルコンは成長したと考えた。以上の結果から時計回りの温度–圧力–時間経路が得られ、高度変成作用が少なくとも5500万年間続いたことが考えられる。