日本地球惑星科学連合2018年大会

講演情報

[JJ] Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2018年5月20日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7ホール)

コンビーナ:桑野 修(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、清水 以知子(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、石橋 秀巳(静岡大学理学部地球科学専攻、共同)、田阪 美樹(島根大学)

[SCG63-P07] DEM解析の試行回数についての基礎検討
― 単純せん断シミュレーションを例として ―

*竿本 英貴1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:個別要素法、中心極限定理、変動係数、単純せん断、シミュレーション回数

地盤材料や岩石材料,および粉体の力学的な挙動を模擬する数値解析手法の一つ として,Discrete Element Method(DEM)が広く用いられる.近年,DEMは材料内のせん断帯の形成過程や土石流等,非線形性が強い現象の模擬にも適用されており,計算機の能力の発達とともにその適用範囲を拡大してきた.非線形性が強い現象を模擬する際,1回の解析で得られる結果がその現象の平均的な挙動を模擬しているかどうかは不明であるため,基本的には複数回の解析を実行して結果の信頼性を確認する必要がある.また,DEM粒子の初期配置が異なるだけで得られる力学挙動が変化することも確認されているため,この観点からも複数回の解析実行が望まれる.ところが,平均的である挙動を求めるための解析実行回数に関する具体的な知見はほとんどなく,解析実施者の裁量に依存している.当然ながら,模擬しようとする現象の非線形性等も勘案する必要があると考える.以上の背景を踏まえ,本研究では単純せん断シミュレーションを例として,平均的な挙動を得るための解析実施回数を統計的・合理的に算出することを試みる.
具体的には,粒子数を4水準(250,500,750,1000個),拘束圧を4水準(125, 250, 375, 500 kPa)とした総当たり16ケースについて,単純せん断試験のDEM解析をそれぞれ1000回計算し,応力-ひずみ曲線に対して得られた変動係数(標準偏差/平均値)を利用することで平均的な挙動を得るための解析実施回数を算出した.
今回の検討を通じて得られた知見は以下のとおり.
(1) ピーク強度後の強度低下時のバラつきが最も大きい.
(2) せん断ひずみがゼロに近い領域では一定以上の変動係数が存在するため,せん断剛性を算出するための試行回数が少なくてすむわけではない.(せん断ひずみが0.05程度でバラつきが小さくなる)
(3) 平均的な残留強度を求めるためにも一定以上の試行回数が必要.
(今回実施したケースでは,最低でも10回(粒子数1000,拘束圧500 kPa))
(4) 平均値を得るための試行回数は,拘束圧よりも解析で用いる粒子数に対する依存性が強い.
(5) 平均値を得るための試行回数は,拘束圧・粒子数ともに大きい方が少なくなる傾向がある.