[SEM17-P09] 北八ヶ岳,横岳最新溶岩の古地磁気学的年代推定
キーワード:横岳、最新溶岩、古地磁気学的年代推定
長野県中部,八ヶ岳火山列の北端に位置する横岳は,主に9枚の溶岩流(Y1-Y9)から構成される(河内1974-75),火山列中唯一の活火山である.南麓に分布する坪庭溶岩(Y9)は,噴出年代が最も新しいこともあり,溶岩地形が良く保存されている.Y9溶岩の年代に関して,奥野(1995)はY9溶岩と同時期の噴出物と考えられるNYk-1テフラの14C年代から約0.8kaと推定した.奥野・小林(2010)は,Y9溶岩と同時期に噴出したと考えられるのはNYk-1テフラではなくNYk-2テフラであると修正し,同テフラの2.35~2.15kaという14C年代をY9溶岩の噴出年代とした.しかし,同テフラ試料の採取地点はY9溶岩の分布域外に位置し,Y9溶岩と同時期の噴出物でない可能性も考えられる.またY1-Y8溶岩についても,Y5・Y6溶岩の間の層準に位置するYt-Pm4テフラの年代(32ka)が得られてはいるものの(大石, 2015),各溶岩の噴出年代は求まっていない.そこで本研究では,古地磁気学的手法を用いてY9溶岩とその一つ前の噴出物のY8溶岩の年代推定を試みた.
Y8溶岩から32試料,Y9溶岩から60試料を定方位で採取し,段階熱消磁実験とIZZI法(Yu・Tauxe, 2005)による古地磁気強度実験を行った.
実験の結果,Y8溶岩からは偏角4.5°,伏角50.7° (α95=4.1°),Y9溶岩からは偏角4.7°,伏角51.8° (α95=2.2°)の平均方向が得られた.永年変化曲線(Hayashida et al., 2007; Hatakeyama et al., in prep.)と比較したところ,Y8溶岩からは2.75~2.85ka,3.0~3.1ka,3.5~3.55ka,4.6ka,6.0ka,6.2~6.5ka,6.7~6.85ka,Y9溶岩からは0.6ka,1.75ka,2.4~2.45kaの年代が得られた.
強度実験の結果,Y8溶岩からは48.4±2.1μT,Y9溶岩からは52.4±4.3μTの古地磁気強度が得られた.永年変化曲線(Cai et al., 2016)と比較したところ,Y8溶岩からは3.5~4.0ka,Y9溶岩からは0.5~1.4ka,1.8~2.0ka,2.2~2.5kaの年代が得られた.
方位と強度の結果を合わせると,Y8溶岩の噴出年代は約3.5~3.55ka,Y9溶岩は約0.6ka,2.4~2.45kaと推定される.しかし,Y8溶岩の古地磁気強度推定に用いた試料数は少なく,強度から制約される年代の信頼性は高くない.また,Y9溶岩は2つの年代のどちらかであることが示唆され,2つの年代は奥野(1995),奥野・小林(2010)で得られたNYk-1テフラ,NYk-2テフラの14C年代とほぼ一致する.Y9溶岩がY8溶岩と異なり,植生に覆われておらず,新鮮な溶岩地形が残されていることを考慮すれば,約0.6kaを噴出年代と考えたいが,これ以上議論するには別の手法からのアプローチが必要だろう.
また今回,偏角補正のための太陽方位測定を計11地点で行ったところ,各地点で得られた偏角は広域の偏角値(国際標準地球磁場値, -7.71°; 国土地理院の偏角図2015.0年値, -7.26°)と大きく異なり,最大で約30°の差が生じることが分かった.磁気コンパスを用いてNRM強度の強い溶岩を定方位で採取するには,方位測定による偏角補正が重要であることが,本研究結果からも明らかとなった.
Y8溶岩から32試料,Y9溶岩から60試料を定方位で採取し,段階熱消磁実験とIZZI法(Yu・Tauxe, 2005)による古地磁気強度実験を行った.
実験の結果,Y8溶岩からは偏角4.5°,伏角50.7° (α95=4.1°),Y9溶岩からは偏角4.7°,伏角51.8° (α95=2.2°)の平均方向が得られた.永年変化曲線(Hayashida et al., 2007; Hatakeyama et al., in prep.)と比較したところ,Y8溶岩からは2.75~2.85ka,3.0~3.1ka,3.5~3.55ka,4.6ka,6.0ka,6.2~6.5ka,6.7~6.85ka,Y9溶岩からは0.6ka,1.75ka,2.4~2.45kaの年代が得られた.
強度実験の結果,Y8溶岩からは48.4±2.1μT,Y9溶岩からは52.4±4.3μTの古地磁気強度が得られた.永年変化曲線(Cai et al., 2016)と比較したところ,Y8溶岩からは3.5~4.0ka,Y9溶岩からは0.5~1.4ka,1.8~2.0ka,2.2~2.5kaの年代が得られた.
方位と強度の結果を合わせると,Y8溶岩の噴出年代は約3.5~3.55ka,Y9溶岩は約0.6ka,2.4~2.45kaと推定される.しかし,Y8溶岩の古地磁気強度推定に用いた試料数は少なく,強度から制約される年代の信頼性は高くない.また,Y9溶岩は2つの年代のどちらかであることが示唆され,2つの年代は奥野(1995),奥野・小林(2010)で得られたNYk-1テフラ,NYk-2テフラの14C年代とほぼ一致する.Y9溶岩がY8溶岩と異なり,植生に覆われておらず,新鮮な溶岩地形が残されていることを考慮すれば,約0.6kaを噴出年代と考えたいが,これ以上議論するには別の手法からのアプローチが必要だろう.
また今回,偏角補正のための太陽方位測定を計11地点で行ったところ,各地点で得られた偏角は広域の偏角値(国際標準地球磁場値, -7.71°; 国土地理院の偏角図2015.0年値, -7.26°)と大きく異なり,最大で約30°の差が生じることが分かった.磁気コンパスを用いてNRM強度の強い溶岩を定方位で採取するには,方位測定による偏角補正が重要であることが,本研究結果からも明らかとなった.